中国、西日本豪雨災害と赤坂自民亭を大きく報道
また中国政府の通信社である新華社は「日本西部の暴雨により176人死亡――地方は災害に遭っているのに、酒宴は逃さない、日本政府に批判」というタイトルの記事を載せた(リンク先は華西都市報が転載したもの。文末に「新華社による」とある)。
これを読むと、ようやくCCTVが何を言っているのかがわかってくる。
そこには「日本の気象庁は(7月)5日の明け方に大阪府北部地震災害地域に災害警報を発布し、午後(2時)には東京と大阪で緊急発表を行ない、各方面に警戒を呼び掛けた」と書いてある。
そして安積明子氏が東洋経済で書いている<豪雨でも「宴会自慢」をやらかす"想像力欠如" 安倍政権の売りは危機管理能力だったのに・・・>という論考が引用されている。
つまり、CCTVの解説も含めて、中国の報道が言いたいことは「中央政府と地方行政が緊密に連携していない」ということと「気象庁がこれだけ警戒情報を発布しているのに、日本政府はそれに緊急に呼応できず対応が遅れて、被害が広がった」と言いたいのだということが見えてくる。
いや、あなたの国に、そのようなことを言われる覚えはないが・・・・・・と反論を書きたいところだが、中国が日本の情勢分析をして対日戦略を練ろうとしていることは分かっているので、一応、中国がこのたびの災害と日本政府の対応を、どのように分析しているのかを知っておくことは、日本の対中戦略を考える上で、無駄ではないだろう。彼らは安倍政権のどこに弱点があるのか、日本の国力のどこに構造的脆弱性があるかを必死で見つけようとしている。そこには尖閣を狙う中国の姿さえある。その中国をくまなく分析しておいた方が、こちらの研究には役立つ。
日本の報道
念のため。
順番が逆になったが、日本がどのように報道しているのかが気になったので、ネットで調べたところ、TBSのNスタの報道をかなり詳細に紹介してあるページを見つけた。日本の方々には紹介するまでもないことだろうから、詳細は省く。
ただ、どうやら5日の夜に赤坂自民亭の楽しげな様子をツイートした西村官房副長官は、その謝罪と弁明により、5日には早くから警戒情報が出されていたことを認識していたことを明確にする結果を招いている。5日の昼間から知っていたのであれば、緊急にその事態を安倍首相に報告し、国土交通相や防衛相などを中心に災害対策本部を立ち上げて地方政府と緊密に連携し合うべきだっただろう。
緊急避難情報を地域住民に伝える方法などに関しても迅速にして適切な指揮を徹底させることができたかもしれない。気象庁は早くから数十年に一度の記録的豪雨になる可能性があることを警告していたのだから。
そのリスク管理が迅速でなかったために、より多くの命を奪った結果を招いたことは否めない。緊急避難情報が出されるのが遅かったり、それが届かなくて逃げ遅れたために命を失った住民の方もおられる。そのことは悔やまれる。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。