最新記事

中国

中国、西日本豪雨災害と赤坂自民亭を大きく報道

2018年7月13日(金)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

また中国政府の通信社である新華社は「日本西部の暴雨により176人死亡――地方は災害に遭っているのに、酒宴は逃さない、日本政府に批判」というタイトルの記事を載せた(リンク先は華西都市報が転載したもの。文末に「新華社による」とある)。

これを読むと、ようやくCCTVが何を言っているのかがわかってくる。

そこには「日本の気象庁は(7月)5日の明け方に大阪府北部地震災害地域に災害警報を発布し、午後(2時)には東京と大阪で緊急発表を行ない、各方面に警戒を呼び掛けた」と書いてある。

そして安積明子氏が東洋経済で書いている<豪雨でも「宴会自慢」をやらかす"想像力欠如" 安倍政権の売りは危機管理能力だったのに・・・>という論考が引用されている。

つまり、CCTVの解説も含めて、中国の報道が言いたいことは「中央政府と地方行政が緊密に連携していない」ということと「気象庁がこれだけ警戒情報を発布しているのに、日本政府はそれに緊急に呼応できず対応が遅れて、被害が広がった」と言いたいのだということが見えてくる。

いや、あなたの国に、そのようなことを言われる覚えはないが・・・・・・と反論を書きたいところだが、中国が日本の情勢分析をして対日戦略を練ろうとしていることは分かっているので、一応、中国がこのたびの災害と日本政府の対応を、どのように分析しているのかを知っておくことは、日本の対中戦略を考える上で、無駄ではないだろう。彼らは安倍政権のどこに弱点があるのか、日本の国力のどこに構造的脆弱性があるかを必死で見つけようとしている。そこには尖閣を狙う中国の姿さえある。その中国をくまなく分析しておいた方が、こちらの研究には役立つ。

日本の報道

念のため。

順番が逆になったが、日本がどのように報道しているのかが気になったので、ネットで調べたところ、TBSのNスタの報道をかなり詳細に紹介してあるページを見つけた。日本の方々には紹介するまでもないことだろうから、詳細は省く。

ただ、どうやら5日の夜に赤坂自民亭の楽しげな様子をツイートした西村官房副長官は、その謝罪と弁明により、5日には早くから警戒情報が出されていたことを認識していたことを明確にする結果を招いている。5日の昼間から知っていたのであれば、緊急にその事態を安倍首相に報告し、国土交通相や防衛相などを中心に災害対策本部を立ち上げて地方政府と緊密に連携し合うべきだっただろう。

緊急避難情報を地域住民に伝える方法などに関しても迅速にして適切な指揮を徹底させることができたかもしれない。気象庁は早くから数十年に一度の記録的豪雨になる可能性があることを警告していたのだから。

そのリスク管理が迅速でなかったために、より多くの命を奪った結果を招いたことは否めない。緊急避難情報が出されるのが遅かったり、それが届かなくて逃げ遅れたために命を失った住民の方もおられる。そのことは悔やまれる。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中