愛する者の「死」遺族にどう伝えるか 米国捜査官の場合
ソーシャルメディアより早く
州の法律によって定められている死亡通知を行う人たちは、それがどのように行われるべきかについて、意見がおおむね一致している。
簡潔に伝えること。そして、直接的な言葉を使うこと。例を挙げると、「私たちを残していった」という言い方ではなく、「殺された」とはっきり伝える。
玄関や電話ではなく、自宅の中で通知をなるべく行うこと。また、他の親類が同席していることが望ましい。
また何よりも、ソーシャルメディアや報道に出てしまう前に直接知らせること。
ニュージャージー州ジャージーシティーでは、死亡通知を行う際、無宗教の聖職者(チャプレン)を警察官に同行させようとしている。つらい警察の訪問を少しでも思いやりあるものとするための方法として、他のいくつかの管轄区ではすでに行われている。
「警察がどんな努力をしようと、どういったアプローチを取ろうと、われわれが警察であることに変わりない」とマイケル・ケリー警察署長は語った。
このプログラムは、同市で傷害予防に当たるポール・ベランボイヤー氏が考案した。2001年9月11日の米同時多発攻撃から1週間後、同氏は世界貿易センタービルで命を落とした2753人の遺族への通知を手助けするため聖職者になった。
安否不明者の家族に、彼らがもっとも恐れていた事態を通知する中で、ベランボイヤー氏は涙や激しい怒り、またはただうつろな表情を浮かべる人たちと出会った。最初の体験について鮮明に覚えていると同氏は話す。
「その男性はとても怒っていた。まだ若い愛する娘が殺されたからだ。彼女には、みなが思い描き夢見ていた前途有望なキャリアと将来があった」
「精神的に消耗する」プロセス
9.11以降、初期対応者にとって、もっとも試練となった事件は昨年10月1日にネバダ州ラスベガスの音楽フェスティバルで起きた銃乱射事件だろう。容疑者は、日曜日の夜に開催されていたこの野外コンサート会場に向かってホテルの上層階から銃を乱射。会場は修羅場と化し、米現代史上で最悪の銃乱射事件となった。
犠牲者58人を特定し、遺族に伝える任を背負ったのは、同州クラーク郡のジョン・フーデンバーグ検視官とその部下だった。
フーデンバーグ氏は「やや奇跡的」な3日間でミスもなくやり遂げることができたのは、部下25人の功績だとし、感情的につらい仕事だが正当に評価されないことも多いと付け加えた。
「人間にとって、これは恐らくもっとも精神を消耗し、ストレスの多いプロセスの1つだろう」
クラーク郡のプリシラ・チャベス上級検視官は、スタッフの構成員について、10年前はほぼ男性で占められていたが、今では9割が女性だと話す。女性の方が遺族のつらい気持ちに自然と寄り添えるという。
今では、検視官の制服を着て誰かの死を伝えに行くときには、これから起きることへの心構えができているとチャベス氏は言う。だからといって、決して楽なわけではない。
「彼らの顔を見ると、(制服の)ロゴに目をやり、何て書いてあるのか理解する。次には、好奇心あるいは恐怖の表情を見せる」と同氏は語った。
(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)
[ニューヨーク 1日 ロイター]
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