最新記事

W杯

ロシアW杯で水不足、猛暑で拍車

2018年7月9日(月)16時30分
ダニエル・モリッツ・ラブソン

ウルグアイ対フランス戦を控えたサマラで観客に水をかけるボランティア(7月6日)Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

<サッカーファンで溢れかえるロシアの地方都市が問題に直面>

ワールドカップ(W杯)を目がけて世界中からやってくる観光客は、ロシア経済を一時的であれ活性化させるものと期待されていた。だが実際には、大量の観光客をさばききれず逆境に直面する都市が出てきている。

7月7日にイングランドとスウェーデンが準々決勝を戦った地方都市サマラでは、観光客の急増が原因で水不足に陥りつつある。断水のリスクを緩和するため、市の水道当局は一風変わった節水対策を呼び掛けている。「シャワーは2人一緒に浴びましょう」

モスクワ・タイムズ紙によれば、サマラ市の水道当局は水使用量の急増に対応するため、ここ数日で供給量を10%近く増やしたが、住民に対しては引き続き水不足への注意喚起を行っている。観光客に節水を奨励するより、地元の人に普段の生活を改めてもらう方が得策、と考えたようだ。

「数千人の観光客が来て水を使用するため、需給が逼迫している」、とサマラ市の水道会社は7月4日のプレスリリースで述べた。

ソチでは茶色い水が出た

W杯開幕以降、最高気温が35度を超える猛暑が続いていることも、水の使用量増加に拍車をかけている。AP通信によれば、6月25日のロシア対ウルグアイの予選では猛烈な暑さが予想されたため、公共の交通機関からアリーナまで約1.6キロの道のりを歩く観客のために医療スタッフが無料で水を配布した。サポーターにホースで水をかけるボランティアも登場した。

W杯期間、水不足を予想していたのはロシアだけではない。日本の東京水道局は、日本代表戦のハーフタイムと試合終了後にサポーターが一斉にトイレに駆け込むと予想し、準備していた。実際、6月19日の日本対コロンビア戦では、水の使用量がハーフタイム中に24%、試合終了後は50%増えた。

実は2014年ソチ冬季五輪でも、水不足は問題になった。当時のロシアは、選手や観客、メディア関係者などの受け入れに必要なインフラを提供できていなかった。大会を取材したジャーナリストたちは、水道の蛇口をひねると茶色の水が出てきた、と書いた。

(翻訳:河原里香)


ニューズウィーク日本版 トランプショック
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月22日号(4月15日発売)は「トランプショック」特集。関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米3月小売売上高1.4%増、約2年ぶり大幅増 関税

ワールド

19日の米・イラン核協議、開催地がローマに変更 イ

ビジネス

米3月の製造業生産0.3%上昇、伸び鈍化 関税措置

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 米関税で深刻な景気後退の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 9
    あまりの近さにネット唖然...ハイイログマを「超至近…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 10
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中