イタリア国債の混乱、債券市場で「世界的流動性危機」の前兆か
欧州ではいくつかの銀行が、規制の問題からプライマリーディーラー業務から撤退する動きも出ている。ラミー氏は「マーケットメーカーの役割はなお重要だが、それが当てにできなくなっている」と嘆いた。
銀行の代わりにマーケットメーカーとして台頭してきた超高速取引のトレーダーは、気配値スプレッドが急拡大した際には価格提示をやめてしまうとの批判も聞かれる。
ニューヨークを拠点とするヘッジファンド、ハイダー・キャピタル・マネジメントのサイード・ハイダー最高経営責任者(CEO)は、銀行のリスク規制は「一部のマーケットメーカーは、流動性が最も必要な局面で市場からいなくなってしまうことを意味する」と指摘した。
急減する在庫玉
5月29日にはイタリアがユーロ圏を離脱するのではないかとの不安が高まり、市場がパニック的な状態に陥ったとされる。短期国債利回りの上昇率は1992年以降最大となった。
ブルーベイ・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、カスパー・ヘンセ氏は、イタリア国債の気配値スプレッドが普段の2─3bpから15─20bpに広がるのを目にしたと話す。
ヘッジファンドのLNGキャピタルのルイ・ガルグール氏によると、今でもイタリア債市場では、例えば2億ドル相当の大口売却はほほ不可能だという。
欧州の銀行の手元にある債券の「在庫玉」がどの程度かを把握できるデータを探すのは難しい。ただ国際決済銀行(BIS)の推計では、16年時点で米プライマリーディーラーは13年以降米国債の在庫を80%近く圧縮している。
さらに米社債の場合、残高全体に占めるディーラーの在庫玉の比率は、08年の10%から現在1%弱まで下がっている、とガベカル・リサーチは説明した。
気掛かりなのは、2月の株式市場におけるボラティリティ高騰にしろ、16年終盤の瞬間的なポンド相場急落にしろ、最近の流動性消失は資産価格が上昇していた局面で発生した点だ。
この先経済成長が鈍化する可能性があり、中央銀行は緩和を段階的に縮小していく。そうなると次は、今より悪い市場環境の下で新たな流動性危機を迎えることになるかもしれない。
(Tommy Wilkes、Abhinav Ramnarayan記者)
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