「一帯一路」で押し寄せる中国貨物 欧州鉄道網がパンクの危機に
6月27日、中国からの貨物列車がポーランドの国境の町マワシェビチェに到着し始めた約10年前、それは画期的な出来事だった。写真は1月、マワシェビチェに向けて中国浙江省義烏を出発する貨物列車(2018年 ロイター)
中国からの貨物列車がポーランドの国境の町マワシェビチェに到着し始めた約10年前、それは画期的な出来事だった。ノートパソコンや自動車を最短2週間で欧州に運べるようになったからだ。だがその運行は、月に1本と極めて少なかった。
しかしこの1年で、欧州まで経済圏を広げようとする中国政府のシルクロード構想に後押しされて運行本数が急増。ひと月最大200本にまで膨れ上がった需要に応えるため、当局は対応に追われている。
インフラの不備と書類手続き処理の遅れが原因で、欧州と中国双方の物流拠点で10日以上も貨物が留め置かれるケースが出ていると物流会社は明かす。
中国当局は、さらなる物流の増加を奨励しており、こうした「大渋滞」は今後悪化する見通しだ。
これは、中国の「一帯一路」構想が一部で成功を収める一方で、相手国の対応が追いついていない現状を浮き彫りにしている。
中国鉄路総公司によると、この国際定期貨物列車は、米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のほか、仏スポーツ用品会社デカトロン、スウェーデンの自動車メーカー、ボルボ などが利用しており、昨年は中国と欧州の間を結ぶ列車3673本が運行された。2016年は1702本、2011年はわずか17本だった。
同路線は今も採算が取れておらず、国の補助金で支えられている。だが中国の都市政府は、同路線が「一帯一路」の4カ年計画に組み入れられたことを受け、列車の増発に乗り出している。
中国当局は2016年、この輸送網を「中欧班列(チャイナ・レールウェイ・エクスプレス)」と名付け、2020年までに運行本数を年間5000本に拡大する目標を掲げた。
中国鉄路総公司のサイトによると、2011年には重慶とドイツのドュイスブルグを結ぶ1本しかなかった定期貨物列車は、今年4月までに65本に増え、中国43都市と、スペインや英国も含めた14カ国の42地点を結んでいる。
インターレイル・ヨーロッパのマネジング・ディレクター、カーステン・ポットハースト氏は、渋滞に不満を訴える輸送業者の1人だ。欧州鉄道インフラへの政府の投資が不十分だと話す。
「(各国政府は、中国からの)列車が来るとは思っていたが、これほどの本数が来るとは考えていなかった」と、ポットハースト氏は話した。