最新記事

日本経済

日欧経済連携協定スタート 世界のGDP3割占める巨大市場が誕生

2018年7月18日(水)07時24分

 7月17日、日本と欧州連合(EU)は、首相官邸で経済連携協定(EPA)に署名した。写真中央は安倍首相、左はトゥスクEU大統領、右はユンケル欧州委員長。代表撮影(2018年 ロイター)

日本政府と欧州連合(EU)は17日、首相官邸で経済連携協定(EPA)に署名した。人口6億人、世界の国内総生産(GDP)3割を占める巨大市場が誕生する。安倍晋三首相は会見で「保護主義が広がる中、日本とEUで自由貿易の旗手として世界をリードしたい」と強調。米国が保護主義に転じる中で、日欧が自由貿易体制を死守する姿勢を示した。

首相は、日欧EPAを「国際社会の平和と繁栄をリードする基盤」と評価。「日本のGDPを約5兆円、雇用を29万人創出する」、「欧州の優れたかばんや、ワイン、チーズなどを気軽に楽しめるようになる」と強調した。

EPA発効に伴う懸念に対しては「政府としてはしっかり向き合い対応していく」と述べ、環太平洋連携協定(TPP)の対応策を援用するとの方針をあらためて示した。

安倍首相によると、EU側との会合では、質の高いインフラ輸出でも連携する方針を確認。北朝鮮情勢についても意見交換し「有意義な議論を行い、拉致問題解決で北朝鮮と直接向き合う決意を伝え、理解を得られた」という。

野上浩太郎官房副長官によると、安倍首相は会合で「英国のEU離脱の行方に懸念をもって注視している」、「強硬離脱となると英国に進出している日本企業に悪影響があるなど」と発言し、EU側に対して離脱交渉についての情報提供を求めたという。

首相はまた、東日本大震災を踏まえたEU側の日本産農産物の輸入規制について撤廃するよう要請したという。

共同声明によると、日本とEUはハイレベル産業・貿易・経済対話を設立し、年内に初会合開催を目指す。

日欧EPAは昨年7月に大筋合意し12月に妥結していた。日本からEUへの乗用車は段階的に関税を撤廃する。EUから日本への化学工業製品や繊維製品などの関税は即時撤廃、皮革・履物の関税は段階的に撤廃する。農林水産品ではコメは対象から除外した。

署名式は当初、安倍首相がブリュッセルを訪れ行う予定だったが、西日本豪雨を受け首相が外遊を取りやめたため、欧州側が来日する運びとなった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 9
    ロシア軍が従来にない大規模攻撃を実施も、「精密爆…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中