The Era of Dataism──データ資本主義の時代
インターネットはもはや、成長産業ではない
iPhoneすなわちスマートフォンが世の中にデビューしたのは2007年である。以来10年余が過ぎ、そしてとうとう昨年、スマートフォン世界出荷数の伸びは止まった。対前年ゼロ成長である。自動車ですら2%成長しているのに、である。
インターネット利用者人口もまた7%とそれまでの二けた成長を割り込み、ダルな低成長時代へと突入した。トレンドから見て今年は5%、来年は3%といった具合だろう。
かつ、その低成長ですら新興国の地方都市におけるそれによってもたらされているのだから、先進国や、新興国でも都市部においてはインターネット人口成長率は完全にフラット化している。
加えて、産業として見れば、そのパイを米国5社と中国2社のプラットフォーマー寡占企業群が牛耳っている。
プラットフォーマーがインターネット経済圏を水平統合的に寡占する事で、彼ら7社は既に巨大であるにもかかわらず引き続き高い収益成長を保持している。故にあたかもインターネット産業は今だ成長産業であるような錯覚にしばしば人々は見舞われる。しかし彼ら以外にとってはそうではない。それが不都合な真実である。
インターネットの実質的な登場は1994年のネットスケープの誕生であるが、そこから四半世紀たった今、インターネットは産業として成熟した。歴史的、一般的に、一つの産業の旬は30年で過ぎると言われている。そう考えればごく自然な結末とも言えよう。
では、インターネットが成熟産業化してしまった今日において、世界に星の数ほど生まれているスタートアップはどこに向かっているのだろうか。莫大な投資資金はどこに向かっているのだろうか。
答えは簡単、「インターネットの外」である。医療、交通、物流、教育、金融、等々リアル世界をテクノロジーによって再定義する競争が始まっている。
現在の世界スタートアップ時価総額ランキング上位から、Uber(交通)、Didi(同)、Xiaomi(製造)、美団点票(出前)、AirBnB(宿泊)と、トップ5の全てが「インターネットの外」が主戦場のビジネスを展開している。
もう一つ、「インターネットの外」とともにポスト・インターネット成熟期の第二のフロンティアがある。「地方」である。
AmazonやAlibabaはウォルマートや世界に無数にあるショッピングモールの合計よりも遥かに大きくなった。にもかかわらず人々はしょせんEコマースでは2割程度しか買っていない。8割はフィジカルな店舗で買う。そしてその比率は地方の2級都市、3級都市ほど高い。
ここに膨大なフロンティアがある。その世界はそう簡単にオンライン化も、IT化もしない。この「地方」こそネクスト・フロンティアである。ここに今、中国勢を筆頭に、欧州のソーシャルインパクトファンド等、世界の金が流入し始めているのである。昨今の流行り言葉、フィナンシャル・インクルージョン(金融包摂)などもこの文脈である。