マレーシア、北朝鮮との国交再開へ マハティール首相が決断する狙いは?
マレーシアの地に再び北朝鮮国旗が翻る日は近い? Athit Perawongmetha-REUTERS
<わずか1年前、北朝鮮は金正恩の異母兄弟である金正恩を暗殺したとしてマレーシアと対立、事実上の国交断絶になったが──>
2017年2月13日、クアラルンプール国際空港で北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄にあたる金正男氏が顔面に猛毒のVXを塗りつけられて「暗殺」された。この衝撃的な事件の実行犯で殺人罪に問われている女性2人の被告の公判がマレーシアの高等裁判所で6月28日開かれた。
検察側は2人の犯行には殺意が認められるとして殺人罪が立証可能との意見書を裁判官に提出した。マレーシアでは殺人罪で有罪となれば死刑が適用されるため、この日の公判は事実上の「死刑の求刑」となった。一方の被告弁護側は「2人はテレビのいたずら番組撮影と信じており、殺意はなかった」として無罪を訴え続けている。
この裁判では事件に深く関与したとされながらマレーシアを出国した北朝鮮国籍の容疑者、重要参考人らの訴追は事実上不可能であることからベトナム人のドアン・ティ・フォン被告(30)、インドネシア人のシティ・アイシャ被告(26)の両被告が「スケープゴートとして処断される」との見方が高まっている。
高裁は次回8月16日の公判で「無罪か裁判継続か」の判断を示す。
こうした中、マレーシアのマハティール首相は外交関係が途絶している北朝鮮との関係を改善するためにピョンヤンのマレーシア大使館を再開し、国交を正常化させる意向であることを明らかにした。
金正男氏殺害事件の黒幕として手配した北朝鮮籍の男性らが警察当局の出頭要請に応じず北朝鮮大使館に「籠城」、マレーシア政府が政治的駆け引きで国外出国に合意した経緯がある。当時ナジブ政権は合意しながらも外交関係の中断を決め、両国はそれぞれの大使館員を召喚した結果、実質上の国交断絶状態がそれ以来続いていた。