ベトナムで反中感情が再燃、政府の外資誘致に抗議デモ
「愛国心」に感謝
こうした中国側の圧迫に対するベトナム政府の抵抗は限定的だ。
ベトナム共産党の中枢は、そもそも国内に反中感情が存在することを認めることすら滅多にない。グエン・ティ・キム・ガン下院議長は15日、「国民の愛国心と、重要な問題に関する彼らの深い関心に感謝する」と語るにとどめ、この問題を回避した。
ベトナム共産党トップのグエン・フー・チョン書記長は17日、99年間の租借権を伴う経済特区について、心配には及ばないと国民に訴えたが、やはり中国について具体的な言及はしなかった。
「誰であれ、混乱をもたらすためにこの国に来るような外国人に土地を渡すほど愚かではない」という同書記長の発言を国営メディアが報じている。
今月10日に起きた抗議行動は大半が平和的なものだったが、南部ビントゥアン省では一部が暴徒化し、自動車が燃やされ、怒った群衆が機動隊に対して投石や体当たりを加えた。
同省では、ベトナム漁船に対する中国の威嚇や、中国が建設した発電所による土壌汚染、主に中国向け鉱物資源を採掘するための森林伐採などの問題が山積しており、長年にわたる人々の憤激が高まっていたと、著名弁護士のTran Vu Hai氏は語る。
人々の怒りは中国だけではなく、汚職が多く、破壊的な中国の商業的利権の言いなりだとみられている地方政府にも向けられている。「人々がなぜ怒っているのか調査せず、問題を解決することもない。この地域では、当局への信頼はすでに失われてしまった」と同氏は語る。
今回の抗議行動における規模と連携は、ベトナム一般市民を勇気づける一方で、ある程度の異議申立てを許容しつつ統制を維持するという与党共産党の綱渡りを困難なものにしている、とアナリストは語る。
急成長するベトナム経済を人質に取ることが可能な、重要な貿易相手国である中国を怒らせるリスクも生じている。