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日銀、景気拡大でも上がらない物価の「なぞ」解明へ 鍵握る「生産性上昇」

2018年6月18日(月)10時38分

6月15日、日銀は物価の現状判断を引き下げ、景気拡大の下での「鈍い物価上昇率」という「なぞ」の存在を正式に提起したかたちだ。都内で5月撮影(2018年 ロイター/ISSEI KATO)

日銀は15日、物価の現状判断を引き下げ、景気拡大の下での「鈍い物価上昇率」という「なぞ」の存在を正式に提起したかたちだ。黒田東彦総裁は同日の会見で、7月末に公表する新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」に向け、議論を深めていくと明言した。物価を巡る構造にメスが入れば、いつごろから物価上昇テンポが加速していくかという点にも、多くの材料を提供する可能性がある。

これまで日銀は、需給ギャップが改善していくにつれ、経済の「体温」が上昇し、好循環が生み出されつつ、物価も上がっていくとのシナリオを描いてきた。

しかし、需給ギャップがプラスに転換し、さらにその幅を拡大させつつある中でも、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は、3、4月と2カ月連続で上昇幅が鈍化した。

この日の会見で、黒田総裁は「春先までの円高が、耐久消費財価格を下押ししたことなどが影響している」と一時的な要因を指摘しつつ、欧米と比べた日本に顕著な要因として、デフレマインドの根強さと企業の生産性向上に向けた取り組みを挙げた。

特に後者に関しては、欧米に比べて非製造業を中心に労働生産性が低い中で、人手不足などを背景に「省力化投資やIT投資が進んで生産性が急速に上がってきており、賃金が上昇しても物価上昇につながらない。短期的には物価が上がらない1つの要素になっている」との見解を示した。

生産性上昇と物価の関係については、昨年7月の展望リポートで「労働コストを吸収し、短期的に物価上昇を抑制する要因になっている」と指摘したが、黒田総裁の今回の説明では、さらに一歩踏み込み、短期的には物価抑制要因になるが、長期的には生産性向上が成長力を高め、最終的には物価押し上げ要因となるとの「論理」を示した。

ただ、黒田総裁は「いずれ(上昇)余地は縮み、賃金が上昇が物価の上昇に素直に反映されていくと思う」と述べつつ、そのタイミングについては「何年とか何カ月とか具体的には申し上げられない」と明言を避けた。

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