日銀、景気拡大でも上がらない物価の「なぞ」解明へ 鍵握る「生産性上昇」
一方、企業の価格設定に対する対応では、日銀が期待インフレ率と呼ぶものの中に、少子高齢化に伴う国内市場の縮小予想が根強くあることも含まれているとの声が、企業関係者から多く出ている。
ある地域金融機関幹部は、人手不足感の強まりを背景に企業が機械化などで生産性の向上を進めているのは事実としながらも「人口減少は企業の先行きに対する見方を慎重にさせている。その面の方が、依然として大きいのが実態だ」とし、企業マインドの転換には相当の時間がかかると指摘している。
黒田総裁はまた、インターネットを介した国際的な財やサービスの取引の拡大など流通形態の変化によって「モノやサービスの価格が上がりにくくなっているのではないか、という議論も最近、非常によく言われている」ことにも言及した。
実際、流通業界では、実物店舗を構えている際に支払う固定費の負担がないネット販売は、コスト面でもかなりの優位性を持っているとの見方が広がっている。
日銀は7月の展望リポートに向けて分析を急ぐが、こうした構造要因の影響が大きいと判断されれば、物価2%目標の実現が一段と遠のく可能性が大きい。
その意味で7月展望リポートでは、18年度だけでなく、その先の物価見通しが焦点になるとみられている。
ただ、生産性上昇の物価下押し効果が、当面、大きいという結論が出た場合、中長期的な物価上昇のタイミングについても、何らかの推論結果が出てくる可能性がある。
たとえば、数年後に物価上昇の可能性が高まるとの推定が示されれば、その時期に日銀が出口政策の検討を始めている可能性もある。
7月に検討を進める物価の構造的な問題の行方は、日銀の金融政策の動向を予測するうえで、かなり重要な位置を占めることになりそうだ。
(伊藤純夫 編集:田巻一彦)
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