最新記事

中国

サッカー選手もアイドルも ウイグル絶望収容所行きになった著名人たち

2018年6月15日(金)17時15分
水谷尚子(中国現代史研究者)

16年4月にウルムチにある複数の書店に電話取材したRFAの調査で、セイプディン・エズィズィのウイグル語著作『セイプディン・エズィズィ回想録』『天山雄鷹~アブドゥケリム・アバゾフの生涯』などが、行政からの通達で販売不可となり、市場から回収されていることが判明し、人々を驚愕させた。初代新疆ウイグル自治区主席であったセイプディンは、共産党寄りの思想を持つ者と認識されていたからだ。

セイプティンの著作を出版してきた北京の民族出版社の担当者は、RFAの電話取材で「彼の著作に限らず、民族出版社がウイグル語で出版した全ての著作が回収され、再検査を受けている。新疆政府の要請でそうなっている」と語った。

「ジェノサイド」を隠す共産党

数年前まで相次いだウイグル人ムスリムの「テロ」行為にせよ、チベット人僧侶の焼身自殺にせよ、追い詰められた「少数民族」の自死を伴う抗議行動は、情報統制のためにすっかり伝わってこなくなった。さらにこれまで現地の生きた情報を伝えてきたRFAにも異変が起こっている。

この1年ほどの間、新疆の収容施設の関連情報は現地のソーシャルメディア微信(WeChat)からフェイスブックに転載され、RFAが確認取材を数カ月間行って世に出るケースが多かった。RFA記者はアメリカから電話していることを隠して取材していたが、最近は中国の電信プログラムが記者の声紋を判別。自動的に電話を切断するようになった。このためこれまでのように取材ができず、記事にできる情報が減っているのだ。

文化大革命から既に半世紀を経ていながら、共産党は当時と同じ過ちを繰り返している。もはやジェノサイドと言っても過言ではない。

【ウイグル収容所問題に関する筆者のこれまでの寄稿】
さまようウイグル人の悲劇
ウイグル「絶望」収容所──中国共産党のウイグル人大量収監が始まった
ウイグル絶望収容所の収監者数は89万人以上

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

欧州の小売業者、EUに米カード2社の手数料引き下げ

ワールド

イラン、マネロン「ブラックリスト」解除へ一歩 国際

ビジネス

ホンダ、カナダで雇用維持確約と産業相 EV計画延期

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、高値警戒感が台頭 円安一
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 9
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中