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サッカー選手もアイドルも ウイグル絶望収容所行きになった著名人たち

2018年6月15日(金)17時15分
水谷尚子(中国現代史研究者)

拘束理由は同化ではない

新疆医科大学の元学長で昨年からは自治区食品医薬品監督庁長だったハリムラット・グプル教授(58)も、今年になってから消息不明だ。中国伝統医療を学ぶ上海中医薬大学を卒業し、ロシアのサンクトペテルブルク医科大学で博士号を取得。中国全国最優秀研究者の1人に選ばれるなど、中国全土でも名を知られる有名教授だった。

医科大学で彼はウイグル伝統医学の継承にも力を注ぎ、民族医学教育ではウイグル語による授業をずっと続けてきた。ハリムラットは収容施設で死亡したとの説もある。

強制収容が始まった昨年初めには、中国語ができないウイグル人に中国語を習得させるため収監しているのではないかとの説があった。しかし、ハリムラットのような子どもの頃から中国語教育を受けて育った人々も多く収監されるようになると、その真の目的を懸念する声が世界中から上がった。

彼らは当局が目の敵とする「過激なイスラム思想」とも反政府運動とも無縁で、当局とはなんとか折り合いをつけ、それぞれの分野で生きてきた中国共産党員ばかりだ。収容施設には健康な身体を持つ男性が主に収容され、いま外にいるのは女性と老人、子どもだけと言っても過言ではない。

人々の生きていく希望を根底から剥奪しているに等しく、このような政策が5年も続けば、ウイグル人社会は経済的にも文化的にも破綻する。

表現の場の剥奪と取材妨害

ネットのウイグル語サイトも一昨年から昨年にかけて続々と閉鎖され、運営者がことごとく拘束された。広告で運営されていたミスラニン・ドットコム(misranim.com)の創設者アバベキリ・ムフタルや、同サイト管理人トゥルスンジャン・メメットも行方不明になっている。トゥルスンジャンの父親はRFAの取材に応えて、「自宅から6人の公安に連れ去られ、どこに居るかさえ分からない」と証言した。

「バクダシ(bagdax.cn)」創設者アクバル・エゼッド、「ボズキル(bozqir.net)」の創設者で自治区教育庁職員のアデル・リシット、テレビ番組の脚本家として知られるオマルジャン・ヘセン、新疆人民ラジオ局記者で新疆教育出版社の教科書編集者でもあったジャーナリストのヤルクン・ルーズ(52)も行方不明になっている。

ウイグル語書籍は粛清のため書店や一般家庭から没収された。新疆ウイグル自治区文学芸術連合の元会長で、詩人のイミン・アフメディは昨年6月、RFAの取材に対し「過去に出版されたウイグル人作家の著作が再検査されている」と語った。ウイグル人に愛読され、現代ウイグル文学を代表する小説であるアブドゥレヒム・オトキュル『目覚めた大地』や『足跡』、ゾルドゥン・サビリ『母なる故郷』なども規制の対象だ。

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