最新記事

日本文化

海外で見た酷すぎるクールジャパンの実態~マレーシア編~

2018年6月11日(月)14時30分
古谷経衡(文筆家)

まあこれの賛否はさておくとして、もっとも驚愕したのはこのコーナーのメインは仏像でも菊花でもなく、スターウォーズのインテリアで占められていたところだ。ダースベイダーやルークスカイウォーカー、R2D2の合金製インテリアが躊躇無く展示されている。え、ここって日本文化、クールジャパンの前衛たるThe Japan Storeですよね?

私は目を疑った。何度も確認したが、そこには菊花と並んでスターウォーズが堂々と棚を寡占しているのである。しかもその値付けが異常極まる。ミレニアム・ファルコン号の、ほんの20センチほどの合金製模型が66,000円也。だ、誰が買うのだろうか?そして、これは日本文化やクールジャパンに何か関係があるのだろうか?ちなみにこの意図不明のスターウォーズ展示には、黒澤明の『隠し砦の三悪人』などの説明は一切存在しないことを付記しておく。

【カルチャーフロア・3F】日本文化の紹介なのにディズニーとLEGOばかりの異様性

furuya20180611095909.jpg
クールジャパンのはずだが、なぜかウォルト・ディズニーの『アナと雪の女王』のコーナーが寡占。本当に大丈夫ですか?ここは本当に日本文化の拠点なんですか?ちなみに「官」の言い訳なのかもしれないが、売られている『アナ雪』のフィギュアは日系企業の版権商品 筆者撮影

furuya20180611095910.jpg
日本から輸入してきたミッキーマウスの模型、という体。しかも一個8,000円~という異様な値段。日本から輸入するとスターウォーズもミッキーマウスも"日本文化"に化けるとでもいうのでしょうか 筆者撮影

しかし、さても無残なThe Japan Storeも、いよいよ3Fは日本文化のコーナーである。すなわち漫画やアニメのコーナーである。ここまで地下から1F、2Fと失望が続いたが、ここで挽回してくれるだろうと筆者は甘い期待を持った。

なにせ、このThe Japan Storeは、マレーシアにおけるクールジャパンの拠点として10億円の公費が投入されているのだ。まあ、なれない南方の土地。官にも多少の不手際はあろう。しかし、流石にクールジャパンの中心となる日本のアニメや漫画のコーナーは、相応充実しているに違いないと筆者は確信した。私は3F行きのエスカレーターに乗る。

そこには、大友克洋や押井守や今敏の作品の数々が鎮座し、また最低でもスタジオジブリのコーナーが「どっかーん」と展示されていると考えた、私が全て甘かったのである。3F「日本文化フロア」で、私を迎えたのは大友克洋でも押井守でも宮崎駿でも無く、ウォルト・ディズニーの『アナと雪の女王』及びデンマークの玩具メーカー『LEGO』、そしてミッキーマウスであった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中