イタリア、銀行再生に暗雲 政局混乱が生むリスク
不動産価格回復への期待
今回の政局混乱は、不良債権処理を必死に進めている銀行に対して、買い手側がさらに高いリターンを要求するリスクを高め、不良債権売却が停滞することで、大幅な値引きを強いられる可能性がある。
イタリア銀行(中央銀行)は29日、今年の不良債権売却額は650億ユーロになると予想。国内金融機関に対し不良債権の削減を推進するよう促した。
イタリアが抱える不良債権額は、リセッション後のピークだった3600億ユーロから750億ユーロ減ったものの、依然として、銀行の融資残高の14%前後に相当している。
この数字は近隣スペインに比べると2倍の水準だ。スペインでは、欧州連合(EU)からの支援、堅調な経済成長、不動産価格の回復のおかげで、不良債権処理のプロセスがはるかに急速に進んでいる。
アリックス・パートナーズでマネージング・ディレクターを務めるクラウディオ・スカルドビ氏は、イタリアでは不動産価格の回復が遅れているため、英国、北欧諸国、また程度の違いはあるがフランスでも不動産バブルが進行している中で、投資家が割安なイタリア物件を好む可能性は依然として高いと語る。
ただ、イタリアの不動産市場が回復しているのはミラノやローマといった大都市や観光地に限られており、バノールキャピタルで債券部門を率いるフランチェスコ・カステリ氏は、不動産相場の回復が広がるには、もっと均質な経済成長が続くことが鍵になるという。
「不動産投資は少なくとも5年のタイムスパンで捉えられる。経済は成長していたが、中期的な展望については疑問が残る」と同氏は述べた。
中堅行の苦境
バンコBPM、UBIバンカ、BPERバンカなど中堅規模の銀行は、インテーザ・サンパオロやウニクレディトなどの大手行に比べ不良債権の処理に手間取っているため、政局の混乱による影響を受けやすいと見られている。
最悪の打撃を受けた銀行には、イタリア10位のクレディト・バルテリネーゼが含まれる。
同行は、3月の総選挙前に新株発行で時価総額を8倍に膨らませることに成功しており、その後も株価が35%上昇していた。
だが、総資本に対する国債保有比率が最も多い銀行の1つであり、不良債権の負担も大きい同行の株価は、新規発行株式を発行した際の0.10ユーロに比べ、11%も下落している。