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北朝鮮トランプは金正恩の「冷凍拷問」を止めなくて良いのか
北朝鮮の人権侵害から顔を背けてはならない Korea Summit Press/REUTERS
<北朝鮮当局が信仰を持つ人に加える虐待は余りに凄惨。トランプは米朝首脳会談で人権問題に言及できるのか>
米国務省は29日(現地時間)、ウェブサイト上で発表した2017年版の「信仰の自由に関する国際報告書」で、北朝鮮の政治犯収容所には8~12万人が収監されており、この内の相当数が宗教的な理由によるものであるとして、北朝鮮における信仰の自由の侵害を強く非難した。
報告書では、北朝鮮では2017年の1年間に、宗教活動をしたという理由から119名が処刑され、770名が収監されたとしている。また、宗教を理由に87名が失踪し、48名が強制移住させられ、44名は身体的に負傷したとした。
さらに、韓国のNGOが2007年から2016年にかけて脱北者1万1730名を対象に調査した結果、99.6%が「北朝鮮では信仰の自由が全く無い」と答えたとした。
北朝鮮当局は、信仰を持つ人にどのような虐待を加えているのか。デイリーNKは昨年、2001年の脱北後にキリスト教に入信し、中国を拠点に北朝鮮の地下教会に対する支援活動を行った経験のあるキム・チュンソンさんにインタビューを行った。そこでキムさんは、次のように証言している。
「(秘密警察の)保衛部は逮捕した信者を眠らせず、5日間ぶっ通しで暴力を振るいます。そうすれば、やっていないことでもやったと答えてしまうのです。5人がかりで、丸太で殴られるのですから。目撃した人の話では、冷凍拷問というのがあるそうです。服を全部脱がせて冷凍室に閉じ込めるというものですが、ほとんどの人が低体温症で死んでしまうそうです。鉄格子に手を縛り付けて、足が地面につかないようにして放置するという拷問もあります。ろくに食事も与えずに暴力を振るい続ければ、数日で死んでしまいます」
<参考記事:「北朝鮮で自殺誘導目的の性拷問を受けた」米人権運動家>
国務省の報告書が物語るのは、米国はこうした実態を知っているということだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、「信仰の自由」を担当する米国務省のサム・ブラウンバック大使は29日、本報告書についての会見の中で「トランプ大統領は北朝鮮の人権問題にとても積極的であるため、米朝首脳会談で北朝鮮の信仰の自由についての問題を提起すると見ている」と語った。
実際のところ、北朝鮮の非核化を最優先するトランプ氏が、首脳会談を壊しかねない人権問題に言及するかどうか、筆者には確信が持てない。しかし、このような人権侵害を知りつつ顔を背けることは、米国の政治家にとっても大きなリスクであることは事実だろう。
<参考記事:あの話だけはしないで欲しい...金正恩氏、トランプ大統領に懇願か>
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。