トランプ政権から歓待を受けた金正恩の右腕、金英哲の黒い経歴
金英哲は2009~2016年、北朝鮮の工作機関でサイバーセキュリティーも担当する軍偵察総局のトップを務めた。その間、西側に対するサイバー攻撃や韓国への軍事攻撃に関与したと見られている。2012年に韓国で活動している北朝鮮のスパイネットワークが一斉逮捕された時には、短期間、降格させられたと言われているが、その後「復権」した。
元CIA分析官で現在ブルッキングス研究所のシニアフェローを務めるジュン・パクによると、金英哲は最高指導者となる金正恩の指導役を務めたという。「軍偵察総局は特に金正恩の指導役として非常に重要な存在で、そこで7年間局長を務め、金正恩の信頼を得たことから見て、金英哲は十分に職務を果たしたということだろう」
局長在任中に金英哲は韓国に対する2件の軍事作戦を指示したと言われている。2010年3月に韓国海軍の哨戒艦「天安」が沈没して兵士46人が死亡した魚雷攻撃と、同年11月の延坪島(ヨンピョンド)への砲撃で4人が死亡し19人が負傷した事件だ。
14年のソニー・ピクチャーズへのサイバー攻撃も金英哲が直接指示したと言われている。このサイバー攻撃は、同社が金正恩の暗殺を描いたコメディ映画『ザ・インタビュー』の全米公開直前に実行された。
最近の金英哲は、北朝鮮の外交活動の中心になっている。2月に開催された平昌冬季五輪では、北朝鮮代表団の一員として韓国を訪問し、閉会式に出席してイヴァンカ・トランプの近くで無表情で立っていた。一方のイヴァンカも金英哲に視線を向けることはなかった。
金英哲がポンペオと会談するのはこれが3回目となる。ポンペオは今年、2回秘密裏に北朝鮮を訪問し、身柄を拘束されていたアメリカ市民3人の解放を実現し、6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談の開催に向けて準備を進めている。
ドナルド・トランプ米大統領は先週24日、北朝鮮側の「激しい怒りとあからさまな敵意」を理由に、突然会談のキャンセルを発表した。しかしその後、態度を軟化させ、会談が開催されるかもしれないと発言している。
ホワイトハウスのジョー・ハギン大統領次席補佐官が率いる「先遣隊」チームは現在、シンガポールで米朝首脳会談の開催準備を進めている。一方、外交・安全保障担当の米政府高官は北朝鮮政府幹部と南北朝鮮を隔てる軍事境界線で協議を続け、会談の内容について議論している。
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