「非核化」で骨抜きにされた「CVID」では、誰も核を手放さない
「非核化」という言葉は、とりわけ「朝鮮半島の非核化」という使い方をされる場合、きわめて曖昧なコンセプトだ。
ジョージ・W・ブッシュ政権時代に北朝鮮の核問題をめぐる協議で米代表団の代表を務めた北朝鮮問題の専門家で、トランプが駐韓米国大使に任命したビクター・チャは6月はじめに議会で、北朝鮮は非核化という言葉を「北朝鮮に対する脅威がもはやなくなった将来のいずれかの時点で、朝鮮半島から核兵器をなくしてもいい、という意味で使っている」と指摘する。米軍が駐留部隊を撤退させること、そしてアメリカが、北朝鮮が核で抑止しなければならないような敵対的な軍事行動をやめることがその条件だ。
北朝鮮は「核開発計画が黙認されることを目指して駆け引きをしている」とルイスは言う。これは北朝鮮がいつか最終的に核兵器を放棄するという約束と、必ずしも矛盾するものではない。核保有国であるアメリカが、核不拡散条約(NPT)の締約国として核兵器の隔絶を目指しているのも、これと同じことだ。
CVID=何も意味しない言葉?
トランプとポンペオに公正を期して言うならば、CVIDの「D」を「非核化(Denuclearization)」に変えたのは彼らが最初ではなく、バラク・オバマ前政権も「D」を「非核化」としたことがあった。だが一連の会談に向けてポンペオが事実上、CVIDのコンセプトを「非核化」にまとめたことに重要な意味がある。
「CVIDを朝鮮半島の『非核化』という意味に変えるのは愚かなことだ」とルイスは言う。「実際には何も意味しない言葉になる。相容れない二つのコンセプトを組み合わせた、矛盾した表現だ」
実際にCVIDが意味するのは、トランプにとっては「首脳会談の成果としてツイッター上や支持者集会でアピールできる何かを手にすること」、一方の北朝鮮にとっては「実際には何も放棄しないこと」になるかもしれない。ボルトンにとっては気に入らない、だがポンペオは実現に漕ぎつけたい空論だ。
「トランプは今回の米朝首脳会談を実現するためなら、どんなことでもするつもりだ」とルイスは言う。「その首脳会談に、完全かつ検証可能で不可逆的な朝鮮半島の非核化の合意が含まれるなら、彼はその合意に喜んで署名するだろう」
(翻訳:森美歩)
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