最新記事

世界選抜

AKB総選挙がやや強引な世界選抜となった理由と背景

2018年6月1日(金)18時40分
我妻伊都

その後、先月30日に発表された中間速報でBNK48から102位チャープラン、120位ミュージック。TPE48は誰も呼ばれなかった。確かにFさんが言った通りのようだ。

ちなみにユーチュブの再生回数の数え方は非公開ではあるが、同じIPアドレスで1日1回と数え、パソコン、スマートフォン、タブレットと端末を変えても同じIPだと1回。1秒でも再生すれば1回とカウントする仕様になっているようだ。そのため、タイのヲタクたちが大量にアクセスしたのだろうと推測できる。

「SNHの反逆」に関係があるのか?

Fさんが台風の目にならないと断言した理由は、投票権獲得のハードルの高さにある。総選挙で投票するための投票権は、指定CDを購入するか、各グループの有料会員になるなどで獲得することができる。ダウンロード版などはなくCDのみで、有料会員は、国内の6グループのみで海外グループは含まれていない。

「わざわざ日本のグループの有料会員になったりするなら応援するBNKなどの応援グッズやコンサートへ行くのではないでしょうか?僕ならそうします(笑)」(Fさん)

ダウンロード版が一般化しているいま、CDのみというのは海外在住者にはハードルが高い。しかも、海外3グループで2011年結成でもっとも歴史があるJKT48は、イスラム教のレバラン(断食明けの休暇)にあたるため参加を辞退している。レバランの日程は決まっているのに、どうして全グループが参加できるスケジュールにしなかったのかという疑問について、前出のFさんは、AKBヲタクたちの間で言われているだけの噂と前置きした上で、

「『SNHの反逆』に関係があると思います。今年中にAKBが上海へ再進出することも発表しているので、ヲタクたちへのアピールと旧SNH運営者たちへのプレッシャーをかけるために、今回やや無理があっても『世界選抜』にしたのだと思います」

SNH48は、中国上海を拠点とするAKBの海外グループとして2013年1月結成されたものの独自運営に走り出し、AKBサイドへの承諾なく北京や広州で姉妹グループを結成。そのため、契約違反として2016年6月にAKBグループから離脱させられたのだ。

この騒動をAKBヲタクたちは、 「SNHの反逆」と呼ぶのだ。その後、瀋陽、重慶、成都にも姉妹グループを誕生させてAKBの歌も無許可で歌い続けているそうで、まさに中国のお家芸のコピー状態なのだ。

契約解除後のSNH48は、中国共産党讃美の歌やナショナリズム色が強い歌などを歌い始め、SNH48のファンたちは、「北朝鮮のモランボン楽団化した」と嘆いていたところで、昨年11月、AKBが1年後をめどに上海再上陸を発表したのだ。

今回の世界選抜が新生SNH誕生へ向けての戦略の中にあると考えるとなんだか面白くなってくる。 

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

BRICS外相会合、トランプ関税の対応協議 共同声

ワールド

ウクライナ、米と可能な限り早期の鉱物協定締結望む=

ワールド

英、EUと関係再構築へ 価値観共有を強調=草案文書

ビジネス

ECB、中立金利以下への利下げも 関税で物価下押し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中