最新記事

南シナ海

南シナ海人工島に中国の「街」出現 周辺国の心配よそに軍事拠点化へ

2018年5月30日(水)12時45分


迫る試練

ホワイトハウスは今月、中国が進める南シナ海での軍備拡張について警戒を強めていると発表。これに先立ってCNBCは、スービ、ミスチーフ、ファイアリークロス各礁に、対艦巡航ミサイル、地対空ミサイルのシステムが配備されたと報じていた。

中国は18日、「南シナ海を巡る戦い」への準備として、島嶼・環礁の一部において、爆撃機の離着陸訓練を実施したことを明らかにした。

一部の米国人専門家は、人民解放軍の写真からは、爆撃機がパラセル諸島のウッディー島に着陸しているように見えると指摘しているが、人民解放軍側は、スプラトリー諸島の拠点に航空機が実際に着陸したことをまだ証明していない。

米国防総省は23日、中国政府が南シナ海で島嶼の軍事化を続けていることを理由に、大規模海上軍事演習への中国の参加を求める招待を撤回した。

次期米太平洋軍司令官に指名されているフィリップ・デービッドソン海軍大将は先月、スプラトリー諸島における中国の基地はすでに完成しており、部隊がまだ派遣されていないだけだと述べた。

デービッドソン大将は米議会の委員会において、「これらの島嶼にどのような部隊が派遣されようとも、領有権を主張する他の国々の軍事力を簡単に上回ってしまうだろう」と述べた。

これまでのところ、中国が建設した人工島の近海を米軍艦艇が航行を繰り返し、またこの水域への各国海軍の展開も増えているにもかかわらず、中国政府の計画に対する明確な影響はほとんど見られない。

「西側諸国の間では、新たな戦略が必要だという切迫感がある」と複数国間での協議に詳しい西側の上級外交官は言う。「たとえ一時的にせよ[中国側の]ジェット戦闘機が配備されれば、足並みのそろった対応が欠落していることが厳しく問われることになろう」

すでに中国の大型強襲揚陸艦その他の艦艇が、ファイアリークロス、スービ、ミスチーフ礁の本格的な海軍用埠頭を利用している。領有権紛争が白熱する水域全体にわたり、他国の海軍将校らの言う「事実上の恒久的なプレゼンス」があることを示している。

中国軍は、彼らが実効支配する島嶼を利用して、中国海軍将校らが他国海軍に対して「軍事警戒圏」と宣言する水域の監視活動を行っている。だがこの「軍事警戒圏」という言葉は曖昧であり、アジア・西側諸国の軍当局者は、国際法においては何ら根拠がないとしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中