南シナ海人工島に中国の「街」出現 周辺国の心配よそに軍事拠点化へ
5月24日、南シナ海で領有権争いが白熱しているスプラトリー(中国名・南沙)諸島のスービ(渚碧)礁上では中国の建造ブームが続く。専門家は近い将来、ここが東南アジア海域の中心に駐留する初の中国軍部隊の拠点になる可能性があるという。写真は4月、上空から見たクアテロン礁(華陽礁)。Planet Labs Inc提供の衛星写真(2018年 ロイター)
上空から一見したところ、清潔できちんと計画された小さな街のように見える。スポーツ用グラウンド、整然とした道路、民間の大きなビルもそろっている。
だが、この「街」は、実は領有権争いが白熱しているスプラトリー(中国名・南沙)諸島のスービ(渚碧)礁上にある。この地域の安全保障専門家によれば、近い将来、ここが東南アジア海域の中心に駐留する初の中国軍部隊の拠点になる可能性があるという。
ロイターが閲覧した民間部門によるデータ分析では、中国沿岸から約1200キロ離れたスービ礁には、現在、個々に識別できる建造物が400棟近く存在する。中国の他の島嶼(とうしょ)よりもはるかに多い。
安全保障専門家と外交関係者によれば、スービ礁には将来的に人民解放軍の海軍陸戦隊数百名が常駐する可能性があるだけでなく、中国が文民の存在によって領有権の主張を強化しようとしているため、行政拠点が置かれる可能性もあるという。
画像調査によって独立系メディアを支援する非営利団体アースライズ・メディアのデータは、2014年初頭に中国がスービ礁の浚渫(しゅんせつ)を開始した時期にさかのぼり、「デジタルグローブ」衛星によって撮影された高解像度画像の調査に基づいたものである。
画像には、整然と並んだバスケットボール・コート、練兵場、多種多様な建造物が映っており、建造物の一部の脇にはレーダー装置が見える。
アースライズの創設者ダン・ハマー氏によれば、彼のチームが建造物としてカウントしたのは、自立した、恒久的で識別可能な構造物だけだという。
シンガポールで活動する安全保障専門家のコリン・コー氏は、データと画像を見た後で、「信じがたいことに、バスケットボール・コートのすぐ下に、中国本土で標準的とされる人民解放軍の基地が見える」と語った。
「だが、何らかの部隊を派遣することが大きな一歩になる。その後は、その部隊の安全を守り、維持していく必要がある。つまり、軍事的なプレゼンスは現状に比べて大きくなっていく一方だろう」
西側の上級外交官は、いずれ中国が部隊またはジェット戦闘機を人工島に配備するようなことがあれば、いよいよ重要な通商路である同海域の支配をもくろむ中国の決意をくじくための国際的な取り組みが問われることになる、と語る。