最新記事

映画

「反共」から「統一」まで 韓国とハリウッドが描いた北朝鮮とは?

2018年5月27日(日)20時30分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

板門店の共同警備区域での南北兵士の交流を描いた「JSA」 (C)CJ Entertainment

<連日のように状況が二転三転する北朝鮮情勢。北朝鮮との交流に前向きなのは文在寅大統領だけでなく映画界も熱い視線を送っている──>

4月27日、韓国と北朝鮮の境界線にある板門店で、歴史的な南北首脳会談が行われ日本でも生中継されるほど大きく報道されたのはちょうど1カ月前のこと。それからの朝鮮半島を巡る動き、特に米朝首脳会談に向けた動きはまるでジェットコースターのような目まぐるしさで、26日には文大統領と金正恩国務委員長によるまさかの2度目の南北首脳会談が実現。果たしてトランプ大統領と金正恩国務委員長は話し合う日が来るのか、全世界が注目する日が続いている。

そんな期待と不安があるなか、韓国国内では4月末の南北首脳会談が想像以上に劇的な成功をおさめたこともあって、全体的には北朝鮮との融和ムードが高まっており、映画界でも北朝鮮に向け熱い視線を送っている。

韓国映画の世界における北朝鮮の描き方はさまざまだ。特に北朝鮮を同じ民族、仲間として描いた友好的な映画は「統一映画」と呼ばれ、一種のジャンルのようになっている。特に有名な数作を取り上げてみよう。

南北の友情を描いた代表作「JSA」

南北会談の中継映像、特に文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩委員長が仲良さそうに手をつないで軍事境界線を歩く映像を見ながらこの映画を思い出した方も多かっただろう。2001年に日本でも公開された「JSA」だ。

ドラマ作家で有名なパク・サンヨン作家の小説「DMZ」が原作で、日本でも人気の高いパク・チャヌク監督が映画化した。南北の兵士が友情をはぐくみ仲良くなっていく姿とそれに伴う悲劇を描いた作品だ。人気の高いソン・ガンホが北朝鮮兵士を演じ、人間味あふれるキャラクターで描いたことによって、同じ民族なんだという親近感を持たせた。一方では、一部の軍人や退役軍人からは「警備兵同士が映画のように仲良くなることはあり得ない」と、批判の声も上がったという。

次に紹介するのは、同じくソン・ガンホが主演している「義兄弟 SECRET REUNION」だ。日本でも2010年に公開された。JSAでは北朝鮮側の兵士を演じたソン・ガンホだが、この義兄弟の劇中ではクビになった元韓国情報員で、カン・ドンウォン演じる北朝鮮工作員を追う探偵という役柄だ。

元国家情報員の探偵と北朝鮮のスパイである男二人が互いに相手の素性を知りつつも近づき、探偵はスパイを見張るために自分の仕事の相棒にする。騙し合いながらも、いつの間にか二人の間には段々と友情が芽生えていく。緊迫したストーリー展開とコミカルな演技が話題となり大ヒットとなった。

韓国人は血縁関係が無くても仲のいい友人を兄弟・姉妹と呼び合うが、タイトルの「義兄弟」には劇中の2人と共に、韓国と北朝鮮が兄弟のような関係であるという意味が込められている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中