金正恩、習近平を再び利用か──日本は漁夫の利を待て
こう言いさえすれば、お世辞に弱いトランプは自分を許してくれるだろうという、文在寅の東洋的な保身術だったにちがいない。
以来、ものの見事にそのお世辞戦略による自己弁護は成功して、トランプは北朝鮮の平昌冬季五輪参加も称賛するようになる。
日本は、このトランプの「圧力が効いたのだ」論に乗っかり金正恩を不快にさせた。
文在寅の「圧力が効いた」論を知った金正恩は、直ちに「調子に乗るな!いくら哀れな立場とはいえ、対話の相手を前にして無礼千万!」と、文在寅を非難した。1月14日の北朝鮮の国営テレビが声を張り上げて、非難文を読み上げた。
今もまた、トランプは米朝首脳会談を前に「圧力」を口にしているので、金正恩は兄貴分の習近平に泣きつきに行ったことは、十分にあり得る。 ただし、今回は、空母の進水式典に北朝鮮の高官も参加する、という可能性は、今の段階では否定できない。
日本は漁夫の利を静観すべき
5月7日付のコラム<中国、対日微笑外交の裏――中国は早くから北の「中国外し」を知っていた>に書いたように、中国は十分に北朝鮮の「狡猾さ」を知っている。その上で、狐と狸の化かし合いをしながら付き合っているのが現状だ。
何れの場合でも、日本は中朝関係の真相だけを直視して、表面上の言動には一喜一憂しない方がいいだろう。また、「圧力だ、圧力だ」と合唱しても、漁夫の利は得にくくなる。むしろ「老獪な戦術」を立て、静かに待っている方が賢い方法ではないだろうか。その方が明日の日中韓首脳会談にも有利に働く。
追記:5月8日19:00(日本時間20:00)、中国の中央テレビ局CCTVは、訪問したのが金正恩であることを発表した。会談は5月7日から8日にかけて行なわれたとのこと。中国外交部は本日17:48(日本時間18:48)の時点で「発表すべき如何なる情報もない」と厳しい顔で言っていた。したがって日本時間20:00の時点では、金正恩はすでに中朝国境を越えて帰国の途に着いていたことになる。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。