最新記事

米朝首脳会談

金正恩の人物像に迫れ 首脳会談控えプロファイラー情報戦の内幕

2018年5月5日(土)19時29分


完璧はあり得ず

この数十年間、米政権は海外指導者のプロファイリングを行ってきた。特に、イラクのフセイン大統領、リビアのカダフィ大佐、キューバのカストロ国家評議会議長など、敵対する国家指導者に対して行われている。他の多くの政府も同様の研究を行っている。

こうした外国要人のプロファイリングは、米政府がナチス・ドイツのヒトラー総統を研究したことから始まり、米政策立案者にとって有益だと時に考えられている。

当時のカーター大統領は、イスラエルのベギン首相とエジプトのサダト大統領の掘り下げたプロファイリングについて、1978年に平和条約を締結する上で「豊かな配当」をもたらしたと、自身の回顧録「Keeping Faith(原題)」に記している。

だが「敵を知る」ためのこうした習慣が、絶対に信頼できるとは限らない。

例えば、正恩氏が2011年に権力の座に就いてまもなく行われた評価の要点は、内部闘争を生き残るにはあまりに経験不足だが、もし生き残った場合、核兵器開発よりも疲弊した自国経済の改革に関心を持つ可能性が高い、というものだった。

「完璧はあり得ない」と、精神分析医のジェロルド・ポスト氏は語る。同氏は政治家の人格を研究する機関をCIAに創設し、正恩氏と父親の正日氏の分析を行った。「だが、金氏がどのように世界を見ているかを理解するため、最善を尽くさなくてはならない」と同氏は述べた。

現在メリーランド州で開業するポスト氏は最近、トランプ大統領へのブリーフィングを控えた側近から相談を受けたと語る。だが、どのような助言を行ったかは明らかにしなかった。

「われわれは皆、情報コミュニティーの司法精神医学者の意見を聞く」。2000年に北朝鮮政策調整官として、当時のオルブライト国務長官と北朝鮮を訪問し、正日氏と会談したウェンディ・シャーマン氏はそう語る。

とはいえ、北朝鮮の指導者を評価する最善の方法は直接接触することだと、シャーマン氏は言う。「情報当局者の一行と訪朝したポンペオ氏は、多くの有益な情報を持ち帰ったに違いない」

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

[ワシントン 26日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中