イタリア、ポピュリズムと極右の連立協議大詰め 経済公約はEUと衝突必至
財政赤字巡る攻防
連立協議に携わっている両党関係者の何人かは、選挙前の提案を一部だけ徐々に実行していくという、より現実的なやり方に結局は落ち着くとの見方を示した。支持者が失望すれば、双方が相手と妥協せざるを得なかったと言い訳するだろう。
それでもこうした政策と、これまでイタリア政府が表明してきた財政赤字と公的債務の削減が整合性を保てるかどうかは分からない。イタリア経済に減速の兆しが見えていることで、新政権の仕事は一層困難になる。
選挙前に五つ星運動と同盟はいずれも、イタリアの経済成長がずっと低迷し貧困が増大しているのはEUの財政ルールがあるからだと批判し、政権の座に就けばEUの意向など無視して歳出を拡大するという公約を掲げた。
足元ではそこまで強硬な姿勢は示しておらず、五つ星運動の幹部は11日、財政赤字を増やす場合はまずEUと協議すると語った。
現政権は、昨年2.4%だった財政赤字の対国内総生産(GDP)比を今年1.6%に、来年は0.8%に下げ、2020年に財政均衡を達成すると約束している。
ディマイオ氏は選挙直前になって、財政赤字の対GDP比をEUが設定した上限の3%よりも引き上げるというそれまでの方針を修正し、この比率を1.5%に保つと述べた。
ただディマイオ氏の考えは、依然として現政権が打ち出した財政均衡化とは異なる。同盟所属のアルベルト・バニャイ上院議員に至っては「財政均衡化目標はイタリア経済を破壊している」とにべもない。
同盟は財政赤字の対GDP比を今年2.8%、2020年に3%まで高めたいとしており、バニャイ氏はこの問題で五つ星運動との合意点を探す必要があると話す。
動揺しない市場
テネコ・インテリジェンスのウォルファンゴ・ピッコリ共同社長は、EU攻撃はイタリアの有権者に受けが良く、新政権にとって欧州委は恐れるに足らない、と指摘する。欧州委は任期が残り1年になり、イタリアの財政に対する監視を強化する以外何もできないからで、市場もこの問題を警戒していないという。
確かに一部の専門家が「悪夢のシナリオ」とみなした五つ星連合と同盟の連立協議が進展しても、これまでのところ市場の反応は非常に限られている。
イタリア国債とドイツ国債の利回りスプレッドは一時7週間ぶりの高水準を記録したものの11日には再び縮小し、制御不能の様相は見せていない。
政治リスクコンサルティング会社ポリシー・ソナーを率いるフランチェスコ・ガリエッティ氏は、両党がまとめた経済政策は「激辛料理」であるとはいえ、投資家はイタリアでようやく政権が樹立される事態を喜ばしく感じていると説明した。
(Gavin Jones記者)