建設業で進む「自律型AIロボ」導入 省力化に有効、課題はコストと納期
5月21日、日本の人手不足の「最前線」とも言える建設業界で、画期的なロボット開発が相次いで進んでいる。AI(人工知能)を駆使し、人手ゼロの現場も出てきた。写真は国立競技場の建設現場。昨年12月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)
日本の人手不足の「最前線」とも言える建設業界で、画期的なロボット開発が相次いで進んでいる。AI(人工知能)を駆使し、人手ゼロの現場も出てきた。
だが、製造業とは異なる厳しい作業現場を自動化するには、長い時間とコストがかかり、生産性の上昇や労働コストの圧縮はなかなか進まない。このままでは2025年に3割超の雇用が減少し、人手面から建設量を維持できないという「最悪の事態」も懸念されている。
10年で3割が退職へ GDP成長率維持できぬ
「このままでは、GDP維持すら難しくなる」──。 建設投資は2010年を底に17年までに3割増となった。だが、その間、就業者構成が急速に高齢化し、建設業界では、建設量の維持に不安の声が上がっている。
建設技能労働者は、55歳以上が3分の1を占める。このため相対的に高齢な労働者の「引退」が見込まれ、25年度までの10年間に全体の3割超に当たる128万人の雇用減少が予想されている。
一方で建設工事の受注自体は、震災復興や東京五輪など大型工事が終息した後も、さほど減らない見通しだ。老朽化インフラの維持補修が20─25年度は年平均2.3%増えると政府は試算している。
すでに安倍政権は、こうした事態を視野に入れ、16年に「i-constrution」と名付けて、25年度までに建設業の生産性を20%引き上げる目標を掲げた。建設業界でもこれを受けて、128万人の労働者不足を補うために若手中心に90万人の雇用確保と、IT化による10%生産性向上を掲げている。
若手確保へ休日増、生産性改善へロボット投入
ゼネコン各社も、従来にない新たな対応に乗り出した。
今年の春闘では、人手確保に向けて大手建設業の賃上げ率が全業種中トップに躍り出た。
さらに若手技能工確保に向け、休日確保を目的にした人事システムの変更も行っている。清水建設<1803.T>は今月9日、技能労働者が休暇を増やした場合の収入減に配慮し、下請け会社に対し、完全週休2日制を取る場合は労務費を10%加算すると発表。2年間で20億円程度の労務費増を見込んでいる。
少子化に加えて、建設業が3K(きつい、汚い、危険)というイメージで敬遠されてきたこともあり、29歳以下の就業者数比率は低下傾向が続き、ピーク時の1997年の22%から、最近では10%まで下がった(国土交通省資料)。大幅な賃上げと休日確保は、厳しい現実を直視した企業の取り組みと言える。