最新記事

建設業で進む「自律型AIロボ」導入  省力化に有効、課題はコストと納期

2018年5月22日(火)11時45分

5月21日、日本の人手不足の「最前線」とも言える建設業界で、画期的なロボット開発が相次いで進んでいる。AI(人工知能)を駆使し、人手ゼロの現場も出てきた。写真は国立競技場の建設現場。昨年12月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

日本の人手不足の「最前線」とも言える建設業界で、画期的なロボット開発が相次いで進んでいる。AI(人工知能)を駆使し、人手ゼロの現場も出てきた。

だが、製造業とは異なる厳しい作業現場を自動化するには、長い時間とコストがかかり、生産性の上昇や労働コストの圧縮はなかなか進まない。このままでは2025年に3割超の雇用が減少し、人手面から建設量を維持できないという「最悪の事態」も懸念されている。

10年で3割が退職へ GDP成長率維持できぬ

「このままでは、GDP維持すら難しくなる」──。 建設投資は2010年を底に17年までに3割増となった。だが、その間、就業者構成が急速に高齢化し、建設業界では、建設量の維持に不安の声が上がっている。

建設技能労働者は、55歳以上が3分の1を占める。このため相対的に高齢な労働者の「引退」が見込まれ、25年度までの10年間に全体の3割超に当たる128万人の雇用減少が予想されている。

一方で建設工事の受注自体は、震災復興や東京五輪など大型工事が終息した後も、さほど減らない見通しだ。老朽化インフラの維持補修が20─25年度は年平均2.3%増えると政府は試算している。

すでに安倍政権は、こうした事態を視野に入れ、16年に「i-constrution」と名付けて、25年度までに建設業の生産性を20%引き上げる目標を掲げた。建設業界でもこれを受けて、128万人の労働者不足を補うために若手中心に90万人の雇用確保と、IT化による10%生産性向上を掲げている。

若手確保へ休日増、生産性改善へロボット投入

ゼネコン各社も、従来にない新たな対応に乗り出した。

今年の春闘では、人手確保に向けて大手建設業の賃上げ率が全業種中トップに躍り出た。

さらに若手技能工確保に向け、休日確保を目的にした人事システムの変更も行っている。清水建設<1803.T>は今月9日、技能労働者が休暇を増やした場合の収入減に配慮し、下請け会社に対し、完全週休2日制を取る場合は労務費を10%加算すると発表。2年間で20億円程度の労務費増を見込んでいる。

少子化に加えて、建設業が3K(きつい、汚い、危険)というイメージで敬遠されてきたこともあり、29歳以下の就業者数比率は低下傾向が続き、ピーク時の1997年の22%から、最近では10%まで下がった(国土交通省資料)。大幅な賃上げと休日確保は、厳しい現実を直視した企業の取り組みと言える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

シャオミのEVが死亡事故、運転支援モードで柱に衝突

ワールド

中国軍、台湾周辺で軍事演習開始 頼総統を「寄生虫」

ビジネス

日経平均は小反発、買い一巡後は上値重い 米関税への

ビジネス

調査統計局長に川本国際局審議役が昇格、理事就任の中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中