トランプが命じたシリア「精密攻撃」の危うさ
13日に米英仏の攻撃を受けたダマスカスの研究施設 (c)DigitalGlobe/REUTERS
<化学兵器使用を理由にアサド政権への限定的な軍事行動に踏み切ったトランプだが、ロシアとの全面対決を招く恐れも>
ドナルド・トランプ米大統領は4月13日、シリアの化学兵器関連施設への精密攻撃を命じたと発表した。同国のアサド政権が化学兵器を使用したとされる問題への対抗措置だ。この作戦には同盟国のフランスとイギリスも参加した。
「私は少し前、シリアの独裁者バシャル・アサド(大統領)の化学兵器能力に関連する施設への精密攻撃を米軍に命じた」と、トランプは全米に生中継された演説で述べた。
「フランスとイギリスとの共同作戦は現在進行中だ」とした上で、トランプはこう付け加えた。「禁止された化学物質の使用をシリア政府が停止するまで、(アメリカは)この対応を継続する用意がある」
シリア政府軍が4月7日、反政府勢力の拠点だった首都ダマスカス近郊東グータ地区のドゥーマを化学兵器で攻撃した可能性があると報じられると、トランプは9日に「強力な」対抗措置を取ると明言。米軍当局者と共に「あらゆる選択肢」がテーブルの上にあると口をそろえて主張し、シリアだけでなく同盟国のロシアとイランも「大きな代償」を支払わされる可能性があると警告していた。
トランプは13日の演説でイランとロシアに直接語り掛けた。「何の罪もない男や女、子供たちの大量虐殺に関与しようとするのはどんな国か? 世界の国々は、どんな友人を持っているかで判断できる。ならず者国家や残忍な暴君、血に飢えた独裁者を支援する国が長期的に成功することはない」
ロシアは15年以来、反政府勢力やイスラム過激派と7年越しの内戦を続けるアサド政権を支援してきた。ロシア軍はシリア全土に展開しているが、最も重要なのは地中海沿岸にある2つの軍事施設――タルトゥースの海軍基地とラタキア近郊にあるヘメイミームの空軍基地だ。トランプ政権が具体的な行動を検討している間に、シリア政府軍は装備の一部を両基地に移動したとも言われている。
米ロ両国はそれぞれの支援勢力を通じてテロ組織ISIS(自称イスラム国)と戦ってきたが、シリアの政治的将来については意見が対立している。ここへきて、両者の対立が本格的な軍事衝突に発展する恐れが出てきた。