最新記事

軍事

中国空軍が空の覇権争いで米軍を制する日

2018年4月14日(土)14時30分
エイブラハム・エイト(軍事アナリスト)

殲20は配備以来、驚異的なペースで改良を重ねF22を追い上げている REUTERS

<中国の最新鋭ステルス戦闘機は驚異的なスピードで進化している>

中国は昨年3月、第5世代ステルス戦闘機「殲20」を初めて実戦配備した。米軍のステルス戦闘機F22ラプターに相当する最新鋭機だ。

第5世代ステルス戦闘機の実戦配備はアメリカ以外では初めて。殲20は最先端のレーダー回避能力、電子機器、空対空ミサイルを備え、水平尾翼が前にあるカナード式の空力形状は高度の操作性を保ちつつステルス性を向上させる。実戦配備から約1年で早くも戦闘能力拡大のため最初の改良を実施。今後も多くの改良が予定されており、世界をリードする戦闘機になる見込みは十分ある。

試作機と初期の量産機の顕著な欠点はエンジンだった。国産エンジンのWS10Gは第4世代の重戦闘機に搭載されていたロシアのAL31がベースになっている。F22が搭載するF119に匹敵するエンジンはなく、そのためパワー不足で航空戦で優位を確保する能力はF22を大きく下回った。

しかしその後、中国の軍事航空産業はF119の性能に近い第5世代エンジンWS15を開発。今後は新しい高性能エンジンが搭載され、大幅な性能アップにつながるはずだ。昨年7月に内モンゴル自治区で行われた軍事パレードに参加した殲20は既にWS15を試験搭載していたと、複数の専門家が報告している。

アップグレードで猛追撃

ほかにもソフトウエア改良、レーダー性能向上、電子機器の拡張・性能向上などの改良を予定。現在はエンジン、レーダーに探知されにくくする特殊ステルスコーティング、兵器格納隔室の修正・変更を進めているらしく、飛行性能や攻撃に耐えて機能を維持する能力、火力の向上が期待できる。改良のペースは速い。F22が実戦配備から13年近く過ぎてもまだ第2弾の改良を完了していないのに比べればなおさらだ。

例えば、数カ月ペースでの兵器格納隔室の改良は米空軍も長年試みてきた。F22の火力を向上させ、より高度な空対空ミサイルを運用できるようにするためだ。だが実際には、F22の改良計画は数年を要し、間違いなく殲20の改良ペースを下回る。

全てのF22に射程距離180キロのAIM120D空対空ミサイルが搭載される頃には、殲20は既にターボジェットより簡易で軽量なラムジェットエンジンを搭載した空対空ミサイルPL21やPL12Dの運用を開始している可能性が高い。より高速で操作性が高く、推定射程距離は200~400キロだ。中国の戦闘機はF22をはるかに上回るペースで進化している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中