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貿易戦争

中国製品へのお仕置き関税は、アメリカに戻ってくるブーメラン

2018年4月7日(土)14時00分
ウィリアム・ホーク(サウスカロライナ大学准教授)

新たな関税の詳細はまだ明らかにされていないが、少なくとも2つの問題がすぐに発生するのは明らかだ。

まずはアメリカの消費者への打撃。安い中国製品のおかげで、一般的な消費者の購買力は年間260ドルほど増えている。その恩恵を受けてきたのは主として労働者だ。

次に、中国からの報復措置で輸出を手掛ける米企業が受ける打撃だ。トランプの発表直後、中国はすぐさま30億ドル相当の米製品に対する報復関税を発表した。これによる被害が大きいのは、トランプ支持派が多い中西部に集中する豚肉と大豆の産業。貿易戦争がエスカレートすれば、報復対象は増えるだろう。

もっと気掛かりな点もある。暴走するトランプ政権が、国際貿易の拡大を支え各国の利害対立を解決してきたシステムを壊しかねないことだ。WTOなどの国際機関は、不完全ながらも貿易戦争の防止に役立ってきた。そうした機関を無視すれば、将来に禍根を残すことになる。

<本誌2018年4月10日号掲載>

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