6カ国協議復帰が前提だった中朝首脳会談──遠のく米朝首脳会談
まず、中朝首脳会談をやってのけてから米朝首脳会談に臨むという「順番」に関する戦略だが、一見「うまい」ように見えるが、しかし、それによりトランプのプライドを傷つけ、米朝首脳会談の可能性を遠ざけている。このことは4月5日付のコラム「河野発言、中国に思わぬ一撃か?」の最後の部分に書いた通りだ。
当たった「河野発言」
さらに北朝鮮問題分析サイト「38ノース」が河野発言を証拠立てる新たな画像を発表したようだ。「38ノース」は「原子炉の稼働が停止した可能性がある」とする一方で、「川から冷却水を取り込む場所で大規模な掘削作業が行われている」「原子炉の将来の稼働に備え、水の供給を安定させようとしている可能性がある」と分析しているという。ANNニュースが伝えている(英文原文は確認していない。どうにも時間が取れないため、第一次資料に当たっていないことをお許し願いたい)。
となれば、「北朝鮮が核実験のための準備をしている」とする河野発言に反論を唱えた「38ノース」だったが、今度は河野発言をサポートしたことになる。
これが真実だとすれば、金正恩は何とまた愚かなことをしているのだろう。
これでは自分の首を自分で絞めているようなものだ。金正恩外交は、これ以上の発展を見ることはできまい。
日本にチャンスか
連鎖反応的に考えれば、これは安倍政権に有利に働く。日米首脳会談も成功する要素が生まれてきた。
というのは、トランプ大統領は「2国間協議」は好むが、「多国間協議」を非常に忌み嫌っているからだ。したがって中朝首脳会談で主導権を奪われただけでなく、米朝首脳会談が6カ国協議につながる可能性があることが判明すれば、トランプは、おそらく、米朝首脳会談など実行しようとはしない可能性があると判断されるからである。大統領の中間選挙に必ずしも利するとは限らないので、実行する方向に動いたとしてもハードルは高いにちがいない。
安倍首相が影響力をもたらし得る空間が、少し開けてきたのではないだろうか。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。