渡り鳥をナビゲートする「体内コンパス」の正体が明らかに
その結果、網膜の「Cry1」と「Cry2」のレベルは概日リズムに従って変動した一方、「Cry4」はいつでも一定であった。磁場を感知する「クリプトクロム」は昼夜を問わず一定のレベルを維持する必要があることから、研究チームでは、「磁場を感知する働きを持っているのは『Cry4』である可能性が高い」と結論づけている。
同様の見解は、カール・フォン・オシエツキー大学オルデンブルグの研究プロジェクトでも示されている。ヨーロッパコマドリの網膜にある「Cry1a」、「Cry1b」、「Cry2」には概日リズムの変動が認められたものの、「Cry4」にはその変動はわずかしかみられなかった。
シーズン毎に網膜の「Cry4」のレベルを調べた
さらに、この研究プロジェクトでは、ヨーロッパコマドリと渡りの習性がないニワトリを対象に、渡りのシーズンである春や秋とそれ以外の時期において、網膜の「Cry4」のレベルを調べた。
その結果、ヨーロッパコマドリの「Cry4」のレベルは、渡りのシーズンにおいて上昇したが、ニワトリにはこのような変化は認められなかった。研究プロジェクトでは、これらの研究結果をふまえ、「『Cry4』が磁気受容性タンパク質であろう」と考察している。
いずれの研究成果も、「『Cry4』が渡り鳥の"体内コンパス"である」ことを証明するまでには至っていないが、「Cry4」という有力な"候補"が特定されたことは、渡り鳥のメカニズムを解明するうえで大きな前進といえそうだ。