最新記事

核開発

米朝首脳会談、金正恩はトランプに何を求めてくるか?

2018年4月25日(水)18時49分


非核化

1990年代初頭以降の北朝鮮との国際交渉は、核ミサイル開発を放棄させることを目標にしてきた。だが北朝鮮は昨年、水素爆弾と大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる兵器の実験を強行している。

トランプ政権の次期国務長官に指名されたポンペオ中央情報局(CIA)長官は、今月行われた上院委の指名公聴会で、米朝首脳会談によって北朝鮮から外交的結果を引き出す軌道に乗ることを楽観視していると述べた。しかし、この会談で包括的合意に至るとの幻想を抱いている者はいない。

「北朝鮮指導部に対して、米国を核兵器のリスクにさらすことから手を引かせるような合意」を目指していると、ポンペオ氏は同公聴会で述べ、米国の国益を最優先する考えを示した。この公聴会前に同氏は北朝鮮を訪れ、金委員長と会談している。

ポンペオ氏の発言は、トランプ大統領が北朝鮮に対してICBMについての早期合意を優先し、同盟国を脅かす短距離ミサイルの問題は棚上げにするのではないかとの懸念を日本と韓国に植え付けた。専門家は、北朝鮮がICBMを完成させるにはなお数回の発射実験が必要であり、金委員長が表明した実験停止には大きな意味があると指摘する。

昨年9月の核実験と11月のミサイル実験以降、北朝鮮が事実上、実験を凍結していることは、米朝交渉の環境整備に寄与している。

検証と見かえり

北朝鮮は、自国経済を締め付けている国際制裁の解除を求めている。失敗に終わった過去の合意では、北朝鮮は兵器開発を放棄する見返りとして、重油や代替の原子炉を含む支援に加え、攻撃や侵略しないとする米国の誓約を含む安全保障を求めていた。

北朝鮮はまた、過去の合意で、核拡散防止条約(NPT)に復帰し、 国際原子力機関(IAEA)の査察官受け入れにも合意していた。北朝鮮の核の主力施設である寧辺(ヨンビョン)の原子炉で行われている核関連活動は、今後の交渉における焦点の1つになるだろう。米政府はまた、豊渓里(プンゲリ)の核実験場の廃棄についても証拠を求めるだろう。

ポンぺオ氏は、北朝鮮は不可逆的な行動を取るまで見返りを期待すべきではないと発言している。北朝鮮が核兵器プログラムの解体に応じるかと聞かれた同氏は、歴史的な検証を踏まえれば「楽観的ではない」と回答。一方で、過去の交渉では、制裁緩和のタイミングが早過ぎたとも指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:欧州中小企業は対米投資に疑念、政策二転三

ワールド

カイロでのガザ停戦交渉に「大きな進展」=治安筋

ビジネス

NY外為市場=ドル全面安、週内の米指標に注目

ワールド

デンマーク国王、グリーンランド訪問へ トランプ氏関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 8
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中