化学兵器疑惑のシリア政権 欧米の報復受けても優勢持続の背景
民間人の避難
一時は東グータ地区で最大の反体制派グループだった「ジャイシュ・アル・イスラム」は、ドゥーマ防備を徹底的に固めたと主張していた。政権側が奪還を試みれば大きな犠牲を伴う、という意味だ。
また同グループは、内戦中に建設した兵器工場があるため、持ちこたえられるとしており、市民への食糧供給も1年間は問題ないと述べていた。
4月7日の攻撃に先立つ年月のあいだに、すでに何十万もの住民がこの地域から退避していたが、まだ数万人が残っていた。
ロシア軍当局者との交渉のなかで、「ジャイシュ・アル・イスラム」側は、ロシア側の憲兵隊を市内に受け入れつつシリア軍の立ち入りは拒否し、同グループ戦闘員は地元の治安部隊として留まることを認めるという合意を求めていた。
前述の同組織幹部によれば、化学兵器使用が疑われた攻撃の2日前までは、ロシア側が新提案を検討すると約束しており、協議は順調に進んでいるように思われたという。
だが、攻撃の翌日にロシアが示した回答は「化学兵器による新たな攻撃か、シリア北部への撤退か」という脅迫だったという。
その日の午後、これまでで最も激しい空爆がドゥーマに対して行われた。国営放送のライブ映像には、黒い煙が厚い雲のように市街から立ち上る様子が映し出された。
アサド政権側は、「ジャイシュ・アル・イスラム」がダマスカス市内の住宅街を砲撃したと主張。同グループが拉致した兵士や市民を解放するという約束を反故にしていると非難している。
「ジャイシュ・アル・イスラム」は攻撃を否認。同幹部は「われわれが戦っている相手はロシアであり、政権側ではなかった」と言う。
「ロシア側が怒った」
アサド政権支持の指揮官は、匿名を希望しつつ、攻撃準備のために軍が動員されたのは4月6日で、「ジャイシュ・アル・イスラム」がドゥーマからの退去という合意を反故にして、受け入れ不可能な要求を持ち出した後だと話している。
要求の内容には、同グループを政党として合法化することや、シリア軍がドゥーマに立ち入らないことなどが含まれていた。アサド政権支持の指揮官によれば、ロシア側は憤激したという。