「いい加減にしないと暴動起こす」北朝鮮国民の不満が爆発寸前
果樹園を視察する金正恩 KCNA
<配給制度は廃止され、庶民は自分で何とか食べていかなければならないのに、余剰生産物を売買しようとすると非社会主義的と取り締まられる理不尽>
北朝鮮当局は、南北和解ムードに浮かれ気味の国民に対する引き締め策として、「非社会主義現象」、つまり当局が社会主義にそぐわないと考える行為に対する取り締まりキャンペーンを行っている。
その対象は、個人主義、外貨を含むカネに対する幻想、帝国主義者の思想、文化的浸透、覚せい剤の乱用など多岐に渡り、取締官のさじ加減ひとつで何でも取り締まることができてしまう。
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加えて、違反者への厳罰をちらつかせて恐怖を煽っている。
昨年末の朝鮮労働党第5回細胞委員長大会で、金正恩党委員長が行った演説をきっかけにして始まった一連の取り締まりだが、国内での不満は危険水位に達している。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、取り締まりの影響で、ソビ車(個人経営の運送車両)への荷物の積載量に制限が加えられたり、市場で売る品物について保安員(警察官)にあれこれ言われたりするなど、人々の生活に支障が出ている。
このままでは商売の自由を奪われ、餓死しかねないと危機感を感じた人々は、露骨に不満の声を上げるようになっている。
「国が配給をくれるのか、月給を払うのか」
「(商売をして)食べていこうとすることそのものが非社会主義扱いだ」
「何もくれずに締め付けるばかりでは騒擾(デモや抗議)が起こるだろう」
「非社会主義を根絶やしにするといってあれこれ禁止すると、暴動が起きるのは時間の問題だ」
配給なしの社会主義なんて
ここから見て取れるのは、北朝鮮の人々の間に、配給制度を放棄した国家に対する幻滅が根強いことだ。北朝鮮ではかつて、生活に必要なもののほとんどを国が配給していたが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の境に配給システムが崩壊してしまった。
人々は餓死から逃れるために市場で商売するようになり、その結果として資本主義が発達し、外国文化が流入した。それらすべてを「非社会主義現象」として取り締まることは、「人民に対する責務を放棄した国が、再び人民を餓死に追いやろうとしている」と受け止められるのだ。
かつて金正日総書記は、当局のあまりの非道ぶりに憤り抗議活動を行った労働者たちを戦車で踏み潰すという非人道的なやり方で押さえ込んだが、国際社会の目が厳しくなっている今、同じことはまずできないだろう。
<参考記事: 抗議する労働者を戦車で轢殺...北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」>
情報筋が訪れた金策(キムチェク)市の魚市場でも、様々な不満の声が上がった。
「自分で稼いで生きていかなければならないのに、取り締まりで苦しむのは庶民ばかり」
「海外からは制裁を受けて、国内では取り締まりを受けている。暮らしは本当に苦しい」
さらには「貨幣改革の時のような惨憺たる光景を思い出す」という言葉も聞かれたという。