イギリスは10年以内に完全なキャッシュレス社会? 急速に電子化する欧州
スウェーデンの年金受給者組織のオルガ・ニルソン氏はBBCに対し、「スウェーデンで現金を使う権利がある限り、人は現金を使い、現金を銀行に預ける選択肢を与えられるべきだ」と述べ、「キャッシュレス社会に反対ではないが、あまりにも速い変化に歯止めをかけたい」と加えた。
自宅にパソコンを持たず、インターネットの使用に不安を抱える高齢者は、銀行での払い込みでも苦労しているようだ。
例えばスウェーデンの大手銀行スカンジナビスカ・エンスキルダ銀行(SEB)は、全118支店のうち現金を扱っているのはわずか7店舗しかない。ネット決済が嫌で店舗に出向いたとしても、店内には電子機器が置かれており、窓口で行員に処理を依頼するよりも、こうした電子機器を使用して自力で済ませるよう銀行側は働きかけているという。
国難時は現金がモノを言う場合も
前述のES紙では、キャッシュレス化の利点として、犯罪の減少や取引の迅速化を挙げている。例えばインドでは、不正資金を撲滅しようとの試みから、貨幣の一部を2016年に廃止した。
しかしスウェーデン中央銀行総裁のステファン・イングベス氏は、スウェーデンのニュースを英語で伝えるザ・ローカル(スウェーデン版)の中で、キャッシュレス化の問題について指摘している。戦争などで国が危機に面した場合、電子マネーではリスクが高いというのだ。
現金は国が保証した通貨である一方で、一般の民間企業が提供する電子マネーで果たして安全な支払いが保障されるのか、と疑問を呈している。
BBCによると、スウェーデン議会では委員会がキャッシュレス経済からどのような影響が起こりえるのかについて調査を始めており、年内には報告書にまとめられる予定だ。