最新記事

電撃訪中

中朝首脳会談を両者の表情から読み解く

2018年3月30日(金)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中朝首脳会談を報道するテレビ画面 Kim Hong-Ji-REUTERS

訪中した北朝鮮要人はやはり金正恩だった。会談中、金正恩がメモを取っていたことと習近平の最大級の笑顔の演出、そして宴会で夫人を習近平に紹介する際の金正恩の緊張した表情などから何が読み取れるかを考察する。

金正恩委員長は会談中、メモを取っていた

3月26日に行われた習近平国家主席と金正恩委員長(以下敬称略)との首脳会談において、最も驚いたのは、金正恩が必死にメモを取っていたことだった。

習近平が話をしている間は、中国語が分からないと思うのだが、それでもしっかり習近平の顔を見つめ、通訳が朝鮮語に通訳し始めると、必死になってメモを取る。

首脳会談ではあり得ない姿だ。北朝鮮においては、さらにあり得ないことだろう。

これは金正恩が習近平に対して、如何に敬意を表そうとしているかの何よりの証左(あるいは演出?)だと思われる。

「私はあなた様の生徒です」

「あなた様が兄貴分で、私はあなた様の弟分に過ぎません」

という意思表示をすることによって、金正恩が習近平にひれ伏していることを表す。

このことからも、訪中を申し出たのが、金正恩側であったことが窺われる。

「習近平国家主席の招聘により」とニュースでは報道しているが、この「招聘」というのは、たとえば金正恩から訪中の依頼があり習近平と会談したいと書いてあった場合、習近平が承諾すれば、習近平が許可を出し、その意思表示として「習近平の名において招聘状を書く」ということを意味するのであって、決して習近平が積極的に招聘したいと望んだから招聘状を書いたということではない。

事実、金正恩訪中が公表された後、中国政府高官は「訪中はもちろん北朝鮮側からのオファーにより実現した」と知らせてくれた。

なお、メモを取っている場面は北朝鮮の報道の中にはない。関西大学の李英和教授が教えてくれた。李教授によれば、29日の北朝鮮の労働新聞は、第一面に「朝中親善を新たな高い段階に押し上げた歴史的出来事」という大見出しを掲げ、5ページぶち抜きの朝中首脳会談大特集を組んだとのこと。そこには53枚の写真が華やかに載っていたが、その中には金正恩がメモを取る写真は、もちろん載っていないと確認してくださった。

こんな場面は、北朝鮮国民に見せたら「屈辱的」と思われるだろうことが、このことからも窺われる。

習近平の最大級の笑顔

習近平という人は、外国の首脳らと会談するとき、笑顔の程度などの「表情」によって相手との距離感や気持ちをストレートに表すことを特徴の一つとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中