北朝鮮「核放棄」は望み薄 金正恩は長期戦の構えか?
3月28日、北朝鮮の非核化に注目が集まっているが、専門家は過去の経緯から実現に懐疑的だ。写真は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。平壌で12月撮影。KCNA提供(2018年 ロイター)
北朝鮮の非核化に注目が集まっているが、専門家は過去の経緯から実現に懐疑的だ。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と今月初めに会談した韓国特使団によると、金委員長は非核化の用意があると言明し、トランプ米大統領とできるだけ早く協議したいと述べた。
金委員長と今週会談した中国当局者も、金委員長から非核化の誓約を得たとしているが、金委員長の訪中を報じた北朝鮮の国営メディアは、これまでのところ核問題には言及していない。
核兵器は、北朝鮮が長年かけて開発してきた「正義の秘刀」(国営メディア)。金委員長にとって身の安全の保障となっているだけでなく、体制の正当性と権力の維持に不可欠で、放棄を決めれば政策の劇的な転換となる。弾道ミサイルの発射実験では記念碑が建てられ、開発にあたる科学者は国民の英雄だ。
アナリストは、金委員長が突然核を放棄するとは考えていない。自身が勝利したという印象を国民やエリート層に与えられるよう、のらりくらりとした長期的なアプローチを取るだろうとみている。
ジョンズ・ホプキンス大の北朝鮮関連ウェブサイトの専門家、マイケル・マッデン氏は「金委員長は国民に何らかの譲歩を迫る必要がない。非核化は実現までに最低でも10年かかるから、なおさらだ」と話す。他国との交渉では「1つか2つの大きな譲歩に応じるのではなく、小さな合意をいくつも積み重ねていく姿を描いていると思われる」という。
米の譲歩が不可欠
過去に北朝鮮との交渉にあたった韓国の複数の元当局者は、政策の大転換は困難だが、実現不可能ではないとみている。それは金委員長が国民に誇れるような、大幅な譲歩を米国から引き出せた場合だ。
元韓国統一相の金炯錫氏は「金委員長は核兵器保有によって米国と国際社会を降伏させたというストーリーを広めたいのだろう。話し合いが順調に進んで制裁が解除され、北朝鮮経済は上向く。そうなれば金委員長の非核化の決断は国民の理解を得て、強い支持が得られるだろう」と述べた。
ただ、トランプ政権はこうした展開を見込んでいない。次期大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に就くボルトン元国連大使は最近、トランプ氏は近く開く見通しの金委員長との首脳会談で、北朝鮮になるべく早く核開発を止めさせることに焦点を絞るはずだと述べた。