ダイムラー筆頭株主に躍り出た中国自動車メーカー吉利の「秘密工作」
ダイムラーは先週、法令に基づく届け出の中で、李書福氏が保有する9.69%の株式を管理する実体としてTenaciou3の名を挙げた。
事情に詳しい人物によれば、今回の投資構造を案出して李氏が流通市場においてダイムラー株を集積することを支援したのはモルガン・スタンレーであり、さらに資金も融資していたという。
また事情に詳しい複数の情報提供者によれば、吉利は元モルガン・スタンレーの幹部、ドイツのダーク・ノテイス氏と中国のバオ・イー氏の2人と契約し、ドイツにおける情報開示義務がすぐに生じないようにする戦術をモルガン・スタンレー、バンクオブアメリカ・メリルリンチ両行が案出するのを支援したという。
Tenaciou3は独自に若干のダイムラー株を購入したが、情報開示は義務付けられない水準だった。
情報提供者2人によれば、両行はその後、別に2つのルートで株式を買い増したが、吉利には所有権が生じる形ではなく、したがって情報開示の義務は発生しなかったという。
一部の株式は直接購入されたが、投資を損失から保護する「エクイティ・カラー」構造によってリスクは相殺されていた。これは、その時価以上の価格で当該の株式を購入するオプションを売る一方で、時価以下の価格で株式を売却する権利を得るオプションを買う仕組みである。
情報提供者によれば、両行はさらに、デリバティブを購入することで若干の株式を購入する権利を取得した。
これらの株式がTenaciou3に売却された場合に、初めて情報開示の必要が生じることになる。
ドイツのメルケル首相は27日、今回の株式取得に関して明らかな法令違反は見られないと述べたが、同国で金融市場の規制を担当するドイツ連邦金融サービス監督庁(BaFin)は、情報開示ルール違反があったかどうか調査している。
ロイターが閲覧したドイツ連邦議会への報告書の中で、同国経済省は、中国企業によるダイムラー株取得という観点から、情報開示規制の強化を検討するとしている。