最新記事

韓国事情

日本流カジノの試金石? セガサミーが取り組む韓国の統合型リゾート事業

2018年3月16日(金)19時00分
佐々木和義

2017年4月韓国仁川にオープンした北東アジア初の統合型リゾート施設「パラダイスシティ」

<2017年4月、日本のセガサミーと韓国カジノ大手パラダイスが出資する統合型リゾート施設が韓国仁川にオープンした>

日本国内の統合型リゾート施設(IR)参入を目指すセガサミーが、韓国仁川に進出してまもなく1年。施設の魅力のほかに、セガサミーグループから派遣する日本人45人のスタッフの日本流おもてなしを武器に順調に業績を上げている。

2017年、仁川に統合型リゾート施設「パラダイスシティ」がオープン

2017年4月、韓国仁川に北東アジア初の統合型リゾート施設(IR)「パラダイスシティ」がオープンした。投資金額は1兆4200億ウォン(約1246億円)で、日本のセガサミーホールディングスが45%、韓国カジノ大手のパラダイスが55%を出資した合弁事業である。

敷地面積33万平方メートル(約10万坪)の複合リゾートで、2017年にホテルとリゾート、カジノ、コンベンションがオープンし、2018年秋にはK-styleショッピングやグルメ、文化芸術まで楽しめる商業施設やファミリー向けエンタテイメント施設「ワンダーボックス」、プールやエステ、韓国式サウナのウォーターパーク「パブリックスパ」、アジア最大となるクラブなどもオープンを予定している「アートテイメント施設」だ。

日本のカジノ解禁に備えたノウハウを習得する

訪韓中国人が増えはじめた2012年、韓国のパラダイスは複合型リゾートを計画し、同社の田会長は旧知であるセガサミーホールディングスの里見会長に合弁を持ちかけた。パラダイスグループは、ソウルのウォーカーヒルや釜山、済州でカジノを運営する韓国カジノの最大手である。

中国人の利用が多いパラダイスだが、セガサミーとの合弁は日本人誘客に繋がる期待があり、セガサミーも日本のカジノ解禁に備えたノウハウを習得する機会と捉え、2014年に合意に達し、同年11月に着工した。訪韓日本人は翌年の2015年に200万を割り込むなど伸び悩んでいたが、一方の中国人観光客は600万人を超え、カジノも特需に湧いていた。

オープンまで1ヶ月に迫った2017年3月、パラダイスシティを衝撃が走る。在韓米軍の高高度防衛ミサイルTHAAD配備に関連し、中国政府が報復として韓国への団体旅行を禁止したのだ。訪韓中国人の激減が予想されるなか、見通しが立たないまま開業を迎えることになる。

仁川空港からわずか5分の距離

先行き不透明なパラダイスシティを救ったのは日本人利用客だった。パラダイスシティは日本に最も近いカジノである。日本の19空港との間に直行便が就航している仁川空港からわずか5分の距離だ。中国人客は予想を下回った一方、日本人客が堅調に推移した。

嬉しい誤算もあった。2017年夏頃から週末になると首都圏の家族連れで溢れかえるようになったのだ。韓国のホテル宿泊料は、利用人数に関わらず1部屋あたりで設定されている。ソウルから近く、宿泊者専用のスパやゲーム、キッズルームなどがあるパラダイスシティは、親子連れにとって、手軽に楽しめるリゾートなのだという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ガザの学校に空爆、火災で避難民が犠牲 小児病院にミ

ワールド

ウクライナ和平交渉、参加国の隔たり縮める必要=ロシ

ビジネス

英総合PMI、4月速報48.2 貿易戦争で50割れ

ビジネス

円債は償還多く残高減も「買い目線」、長期・超長期債
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 4
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 8
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中