あめとムチで権力掌握した安倍首相 次期政権の長期安定が困難な理由
あめとムチ
野党が分裂し、民主党政権時代の混乱ぶりが有権者の記憶にあったことも、安倍首相に有利に働いた。民主党はその後、3党に分裂。野党票の分散や、投票率の低迷もあり、安倍首相は3度の衆院選で連立与党を圧勝に導いた。
日銀の超金融緩和策と財政支出を柱とする成長戦略「アベノミクス」により、日本が1980年代以降で最も長期にわたる経済成長を達成したことも、有権者の意識にある。ただ、消費は減速しかねず、賃金上昇も弱いままだ。
この4年で2度解散総選挙に踏み切った安倍首相の決断も、政権トップの座に挑戦するよりも、再選を果たすことに自民党議員の関心を向けさせ、党内の歩調を保つ効果があった。その一方で安倍首相は、公共事業で選挙区の支持者に報いている。
安倍首相は、巧みに「あめとムチ」を使いこなしていると、東大の内山融教授は指摘する。
しかし、情報へのアクセスを制限することによってメディアの批判を抑えたり、官僚への統制を強化したりする首相戦略の一部は、裏目に出つつあるのかもしれない。
自民党内のライバルたちは、今回の「身びいき」スキャンダルを公に批判するなど、威勢を強めつつある。
「安倍首相はメディアに宣戦布告し、メディアは今、復讐しつつある」と、テンプル大日本校アジア研究学科ディレクターのジェフリー・キングストン教授は言う。
安倍首相の「天敵」と言われるリベラルな朝日新聞は、森友学園への国有地売却を巡る、財務省による決裁書類の改ざんを最初に報じた。
「安倍首相は、官僚の自律性にも宣戦布告した。だが私は、官僚が負けるとは思わない」と、キングストン氏は指摘する。
後継首相は短命か
安倍首相の後任候補として名前が挙がっている岸田文雄前外相や石破茂元防衛相には、安倍氏のように官邸の権力を操るスキルを持った側近が周辺にいないと、アナリストは分析する。
そのため、日本の首相が、回転ドアのように頻繁に交代する事態に再び陥ることを懸念する専門家もいる。
第2次安倍政権が発足する前の5年間で、5人の首相が誕生した。1989年─2001年にかけては9人の首相が登場した後に、小泉純一郎首相が5年の長期政権を担った。
「いま安倍首相が退陣すれば、次の首相は2年ともたないだろう」と、コール氏は予測する。「安倍氏は、積極的な首相だ。次の首相は誰であれ、受動的になるだろう」
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[東京 14日 ロイター]
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