今回は違う! 銃社会アメリカを拒絶する賢い高校生たち
授業をボイコットして米国会議事堂にデモをかける高校生たち(3月14日) Joshua Roberts-REUTERS
<フロリダ州の高校での乱射事件から1カ月。生き残って銃規制を求める高校生に全米3000以上の高校など計18万人が呼応した。今回はなぜ違うのか>
銃規制をめぐっては、アメリカは果てしなく同じパターンを繰り返してきた。
痛ましい惨劇が起きるたびに犠牲者の死を悼み、怒りの声を上げ、銃社会の現状を見つめ直す。だが議論が盛り上がるのは一時期だけで、連邦法の成立には至らず、事件が忘れられた頃にまたもや悲劇が繰り返される。
しかし、今回は様子が違う。2月14日にフロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で起きた銃乱射事件(死者17人、負傷者14人)は、現状を変えるきっかけになるかもしれない(■「銃社会アメリカが変わり始めた」)。
銃乱射を生き残った生徒たちは、全米からの注目をチャンスととらえ、すぐさま議会に銃規制強化を訴えるなどの行動を開始した。呼び掛けに応え、全米の若者たちが#EnoughIsEnough(もう沢山だ)、#NeverAgain(二度と繰り返すな)などのハッシュタグを付けてソーシャルメディアでメッセージを発信、連動して銃規制キャンペーンを展開し始めた。
「今回は違う」と、銃規制団体ギフォーズのイザベル・ジェームズ政治部長は3月14日、本誌に語った。
「生徒たちの訴えを受けて、全米の大人たちも子供の安全を守らなければと、真剣に考え始めた。これはニュータウン以来のことだ」ニュータウンとは、2012年12月14日にコネティカット州ニュータウンのサンディーフック小学校で起きた銃乱射事件のことだ(小学生20人、教職員6人が死亡)。
多過ぎる子供の犠牲者
今回の抗議がこれまでと違うのは、生徒たちがまさしく「もう沢山だ!」と感じている世代であることだと、ジェームズは言う。「彼らは学校で銃乱射事件が頻発する時代に育ち、学校で銃撃対応の訓練も受けてきた世代だ」 それだけ脅威が身近だったわけだ。
ストーンマン・ダグラス高校の生徒の場合はその上、比較的裕福な地域の学校だけの特権になってしまった特殊な「課外教育」を受けていた。そのおかげで、乱射事件直後から銃規制を呼び掛け、効果的に組織化できたのだ(■関連記事「運動を率いる高校生は課外授業が育てた」)。
事件と高校生の行動をきっかけに、アメリカの世論は銃規制に大きく傾いた。CNNは事件の1週間後、対話集会を主催。フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員(共和党)、テッド・ドイッチュ下院議員(民主党)、NRA(全米ライフル協会)の広報担当ダナ・ローズチと並んで、ストーンマン・ダグラス高校の生徒たちも壇上で意見を述べた。
同じ日、ドナルド・トランプ米大統領もホワイトハウスに遺族や生徒たちを招き、話を聞いた。
事件から2週間を経て、ストーンマン・ダグラス高校で完全に授業が再開された日には、ベッツィー・デボス教育長官も同校を訪れ、生徒たちの訴えに耳を傾けた。
事件から1カ月に当たる3月14日を前に、13日には市民団体アバーズが連邦議会議事堂前の芝生に7000足の靴を並べた。これらの靴はサンディーフック小学校事件以降に銃撃で死亡した未成年者の数を表す。
7000 pairs of shoes are on the #CapitolHill grounds for every child killed since #SandyHook#ENOUGH#endguns #SchoolShootings pic.twitter.com/cLE3FAtDv6
— E P C (@EPCab72) 2018年3月13日
CNNによると、7000人という数字の根拠は米疾病対策センター(CDC)のデータ。アメリカでは毎年1300人近い未成年者が銃撃で殺されるという。