最新記事

ロシアスパイ

リトビネンコ事件再び?ロシア元スパイが毒物で重体──スティール文書と接点も

2018年3月7日(水)19時00分
シェイン・クラウチャー

webw180307-litvinenko.jpg
放射性の猛毒ポロニウムを盛られて死んだロシアの元スパイ、リトビネンコの肖像 Sergei Karpukhin-REUTERS

ジョンソン外相は、英議会でリトビネンコ暗殺事件との類似点を指摘した。議員からの性急な質問に対して、ジョンソンは「この事件の詳細や、どんな犯罪であったのかを推測するには時期尚早だ」と述べた。「しかし、議員の皆さんが疑惑を抱いていることは承知している。そして、私が議会に言いたいのは、これらの疑惑に十分な根拠があることが証明されれば、政府は国民の生活と価値観、そして自由を守るために必要な措置を講じるということだ」と、彼は付け加えた。

「私は今、誰かを非難しているわけではない。特定ができないからだ。世界中の政府に言っておく。イギリスの領土内で無実の命を奪おうとするなら、必ず制裁あるいは懲罰を受ける」

スクリパリ父娘の発見後、危険な化学物質と放射能に関する政府の専門家がソールズベリーに呼び出された。警察と専門家が調査をする間、2人が夕食をとったと思われる地元のレストラン「ジッジ」と近くのパプをはじめ一帯が封鎖された。

健康被害から国民を守る政府機関イングランド公衆衛生サービスは、これまで得られた証拠からすると、国民にただちに危険が及ぶことはないとみている。

ウィルトシャー州警察は、「事件の直後に数人の救急隊員が病院で検査を受けたが、1人を除くすべてが退院したこと」を確認した。

毒物の正体は強力な麻薬か

複数の報道によると、事件で使われた不審な物質はフェンタニルと考えられている。ヘロインの50倍以上強く、薬物中毒者の間で人気上昇中の麻薬だ。

「そのベンチには年取った男性と、少し若い女性がいた。女性は男性に寄りかかっていて、気を失っているように見えた。」と、2人を目撃したフレイヤ・チャーチはBBCに語った。「男性のほうは手を奇妙な具合に動かしながら、空を見上げていた」

「すごく気になって、何かをしなくちゃと思った。でも正直に言って、2人があまりにもボーッとした感じだったので、どうやって助けることができるのか、わからなかった。だからその場を離れた。でも2人は何かとても強いものを飲んだようにみえた」

スクリパリと彼の娘はソールズベリー地区病院の集中治療室で治療を受けている。この事件はテロとの関連で論じられてはいないが、ロンドンに本部を置くテロ対策警備室が捜査を引き継いだ。

「今回の捜査はまだ初期段階にあり、現時点ではどんな憶測も無益だ」とイギリスのテロ対策を統轄するマーク・ローリー副総監は語った。

「今の段階では、被害者らが重篤な症状に陥った原因を明らかにすることに集中している。われわれがこの事件を非常に真剣に受け止めていることを改めて国民に示したい。今のところ国民に広く危険が及ぶとは考えていない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中