リトビネンコ事件再び?ロシア元スパイが毒物で重体──スティール文書と接点も
放射性の猛毒ポロニウムを盛られて死んだロシアの元スパイ、リトビネンコの肖像 Sergei Karpukhin-REUTERS
ジョンソン外相は、英議会でリトビネンコ暗殺事件との類似点を指摘した。議員からの性急な質問に対して、ジョンソンは「この事件の詳細や、どんな犯罪であったのかを推測するには時期尚早だ」と述べた。「しかし、議員の皆さんが疑惑を抱いていることは承知している。そして、私が議会に言いたいのは、これらの疑惑に十分な根拠があることが証明されれば、政府は国民の生活と価値観、そして自由を守るために必要な措置を講じるということだ」と、彼は付け加えた。
「私は今、誰かを非難しているわけではない。特定ができないからだ。世界中の政府に言っておく。イギリスの領土内で無実の命を奪おうとするなら、必ず制裁あるいは懲罰を受ける」
スクリパリ父娘の発見後、危険な化学物質と放射能に関する政府の専門家がソールズベリーに呼び出された。警察と専門家が調査をする間、2人が夕食をとったと思われる地元のレストラン「ジッジ」と近くのパプをはじめ一帯が封鎖された。
健康被害から国民を守る政府機関イングランド公衆衛生サービスは、これまで得られた証拠からすると、国民にただちに危険が及ぶことはないとみている。
ウィルトシャー州警察は、「事件の直後に数人の救急隊員が病院で検査を受けたが、1人を除くすべてが退院したこと」を確認した。
毒物の正体は強力な麻薬か
複数の報道によると、事件で使われた不審な物質はフェンタニルと考えられている。ヘロインの50倍以上強く、薬物中毒者の間で人気上昇中の麻薬だ。
「そのベンチには年取った男性と、少し若い女性がいた。女性は男性に寄りかかっていて、気を失っているように見えた。」と、2人を目撃したフレイヤ・チャーチはBBCに語った。「男性のほうは手を奇妙な具合に動かしながら、空を見上げていた」
「すごく気になって、何かをしなくちゃと思った。でも正直に言って、2人があまりにもボーッとした感じだったので、どうやって助けることができるのか、わからなかった。だからその場を離れた。でも2人は何かとても強いものを飲んだようにみえた」
スクリパリと彼の娘はソールズベリー地区病院の集中治療室で治療を受けている。この事件はテロとの関連で論じられてはいないが、ロンドンに本部を置くテロ対策警備室が捜査を引き継いだ。
「今回の捜査はまだ初期段階にあり、現時点ではどんな憶測も無益だ」とイギリスのテロ対策を統轄するマーク・ローリー副総監は語った。
「今の段階では、被害者らが重篤な症状に陥った原因を明らかにすることに集中している。われわれがこの事件を非常に真剣に受け止めていることを改めて国民に示したい。今のところ国民に広く危険が及ぶとは考えていない」