「ここからは私たちの番だ」全米に銃規制を呼びかけた企業トップ
スタックの呼びかけはアメリカ中に響いた。SNS解析ソフトを手掛けるスプラウト・ソーシャルのデータでは、スタックの名前を含むツイッター投稿は過去10日間の平均と比べ1万2000%増加。ハリウッド俳優や女優が支持を表明する投稿もあり、全体の79%がポジティブなリアクションだったという。もちろんアンチも出現し、ハッシュタグ「#boycott」とともにツイートしてウォルマートやディックスでの不買運動を呼びかける者もいる。それでもディックスの株価は、28日の取引で前日から約1.8%上昇。投資家も問題はないと判断している。
ウォルマートとディックスが発表する以前からも、複数の大手企業が全米ライフル協会(NRA)との関係解消に向けた動きはあった。なかでもハーツレンタカー、メットライフ保険、そしてデルタ航空は正式に優遇措置を解消することを発表。他にも多数の企業が賛同しており、NRAとの関係解消を表明した企業は10社を超える。
デルタは2月24日にNRA会員に運賃割引を適用していたが、これを廃止。すると、デルタが本社を置くジョージア州の共和党は態度を一転させ、州議会で審議中のジェット燃料の州税免除の条項の削除をちらつかせているという。ジェット燃料の州税免除はデルタにとって大きな減税が見込める。
(「ジョージア州の議員がデルタの決定に反対なら、デルタ本社のニューヨーク移転を招致するよ」).@Delta, if Georgia politicians disagree with your stand against gun violence, we invite you to move your headquarters to New York. https://t.co/BHvyPECWSe
— Andrew Cuomo (@NYGovCuomo) 2018年2月27日
企業の銃販売年齢規制の可否は裁判所の手に?
連邦法では、銃器販売業者から拳銃を購入できる年齢を21歳以上と定めているが、実は抜け穴がある。今回の動きを報道する日本のメディアは、「販売大手が21歳未満への銃販売を禁止」という伝え方が目立つが、話はここで終わらない。
連邦法では、拳銃以外のライフルや半自動ライフルは18歳以上であれば買うことができるとしている。
それでも、ドナルド・トランプ米大統領が超党派議員のグループと会談するなど、政府も動き始めている。フロリダの銃乱射事件を受け、銃規制措置の強化を求め複数案を提案しているが、その一方で、全米ライフル協会(NRA)はおもしろくない。銃砲所持の権利こそアメリカ人の最も大事な権利と信ずるNRAは2月25日、沈黙を破り「銃のいかなる禁止も支持しない」と言った。
今後の動きとしては、企業による21歳未満への銃の販売規制は裁判所で審査される可能性がある。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法学部のアダム・ウィンクラー教授によると、年齢差別を禁じる州法の違反でディックスは訴えられるかもしれない。「ニューヨークなど一部の州は、企業が年齢という基準で商品やサービスの提供を拒否することを禁止している」と説明している。
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