最新記事

銃規制

「ここからは私たちの番だ」全米に銃規制を呼びかけた企業トップ

2018年3月1日(木)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

スタックの呼びかけはアメリカ中に響いた。SNS解析ソフトを手掛けるスプラウト・ソーシャルのデータでは、スタックの名前を含むツイッター投稿は過去10日間の平均と比べ1万2000%増加。ハリウッド俳優や女優が支持を表明する投稿もあり、全体の79%がポジティブなリアクションだったという。もちろんアンチも出現し、ハッシュタグ「#boycott」とともにツイートしてウォルマートやディックスでの不買運動を呼びかける者もいる。それでもディックスの株価は、28日の取引で前日から約1.8%上昇。投資家も問題はないと判断している。

ウォルマートとディックスが発表する以前からも、複数の大手企業が全米ライフル協会(NRA)との関係解消に向けた動きはあった。なかでもハーツレンタカー、メットライフ保険、そしてデルタ航空は正式に優遇措置を解消することを発表。他にも多数の企業が賛同しており、NRAとの関係解消を表明した企業は10社を超える。

デルタは2月24日にNRA会員に運賃割引を適用していたが、これを廃止。すると、デルタが本社を置くジョージア州の共和党は態度を一転させ、州議会で審議中のジェット燃料の州税免除の条項の削除をちらつかせているという。ジェット燃料の州税免除はデルタにとって大きな減税が見込める。

(「ジョージア州の議員がデルタの決定に反対なら、デルタ本社のニューヨーク移転を招致するよ」)


企業の銃販売年齢規制の可否は裁判所の手に?

連邦法では、銃器販売業者から拳銃を購入できる年齢を21歳以上と定めているが、実は抜け穴がある。今回の動きを報道する日本のメディアは、「販売大手が21歳未満への銃販売を禁止」という伝え方が目立つが、話はここで終わらない。

連邦法では、拳銃以外のライフルや半自動ライフルは18歳以上であれば買うことができるとしている。

それでも、ドナルド・トランプ米大統領が超党派議員のグループと会談するなど、政府も動き始めている。フロリダの銃乱射事件を受け、銃規制措置の強化を求め複数案を提案しているが、その一方で、全米ライフル協会(NRA)はおもしろくない。銃砲所持の権利こそアメリカ人の最も大事な権利と信ずるNRAは2月25日、沈黙を破り「銃のいかなる禁止も支持しない」と言った。

今後の動きとしては、企業による21歳未満への銃の販売規制は裁判所で審査される可能性がある。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法学部のアダム・ウィンクラー教授によると、年齢差別を禁じる州法の違反でディックスは訴えられるかもしれない。「ニューヨークなど一部の州は、企業が年齢という基準で商品やサービスの提供を拒否することを禁止している」と説明している。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米高官、シリア暫定政府指導部と初会談 報奨金取り下

ビジネス

米11月PCE価格+2.4%に加速、個人消費が増加

ワールド

英、駐米大使にマンデルソン氏 トランプ氏対応で労働

ワールド

マスク氏、独極右政党を支持する投稿 「独を救えるの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「汚い観光地」はどこ?
  • 6
    国民を本当に救えるのは「補助金」でも「減税」でも…
  • 7
    クッキーモンスター、アウディで高速道路を疾走...ス…
  • 8
    「え、なぜ?」南米から謎の大量注文...トレハロース…
  • 9
    大量の子ガメが車に轢かれ、人間も不眠症や鬱病に...…
  • 10
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 5
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中