習近平の長期独裁政権が中国内外を脅かす
習が権力基盤を強化し、個人崇拝を進めている証拠は、しばらく前からあった。特に昨年、自分の後継者になり得る若い人材を政治局常務委員会のメンバーに昇進させることを拒否したことで、習が2023年以降も権力の座を降りるつもりはないのではないかという憶測は、既に飛び交っていた。
その中で最も多かった説は、彼が正式な任期制限のない共産党中央委員会主席の座にとどまり、彼に代わって国家主席の座に就く名目上の後継者を選ぶというものだった(中央委員会主席と国家主席のポジションは90年代以降、結びつけられてきたが、理論上は異なる人物が就くことが可能だ)。国家主席の任期制限撤廃は、鄧小平が設置した規範の終わりを示唆している。
公平を期して言うならば、中国の権力継承システムはこれまでも、見かけほどしっかりと確立されたものではなかった。鄧小平は、江沢民とその後継者である胡錦涛の任命に関与していた。つまり習は、中国の建国の父のうちの誰かから祝福されて選ばれたのではない、初の国家主席なのだ。
加えて、鄧小平と(彼に比べれば程度は低いが)江沢民はいずれも、正式に辞任した後も絶大な権力を維持し、後継者たちを悩ませた。2012年に胡錦涛が習に全面的に権限を移譲したことは、今やむしろ例外的なことに思える。
「終身大統領」が続々誕生?
中国の国営メディアは、今回の国家主席の任期撤廃について、世界的な変化や国内の近代化が急速に進むなか、「安定した、力強く一貫した指導体制」を維持する手段だと擁護している。
短期的には、これによって習は新たに、南シナ海における覇権を含む野心的な目標を推し進め、「一帯一路」政策を通して中国の経済的影響力を拡大していくための権限を手にするだろう。
だが過去の例を見ると、長期的には、今回の動きが政治的安定の兆しだとは考えにくい。ルールに基づく権力継承システムがないと、ほかのエリートたちが権力を奪取するため非常手段に打って出る可能性がより高くなる。
今のところ習の支持率はきわめて高く、彼が推し進める腐敗撲滅運動によって、彼のライバル候補の大半が排除されている。だがこれがずっと続くとは限らない。
また今回の変革は、中国以外のところにも影響を及ぼす可能性がある。
中国が経済的影響力を拡大させつつあることで、その安定した独裁主義的モデルが欧米式の民主主義に代わる魅力的なモデルに映り始めている。とくに世界の発展途上国では、中国の例に倣って独裁政治や終身大統領が生まれる可能性もある。
ちなみに、ドナルド・トランプ米大統領も過去に、習近平が権力を増大させていることを羨むような発言をしている。それを考えると、我々が懸念すべきは発展途上諸国だけではないのかもしれない。
(翻訳:森美歩)
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