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カーリング物理学者もお手上げ、カーリングの原理
イギリスとの3位決定戦でストーンを投げる日本代表の藤沢五月 John Sibley-REUTERS
<カーリングのストーンはなぜあのように曲がるのか。他の物体と違うことはわかっているが、理由はまだわからない>
ピョンチャン(平昌)冬季オリンピックのカーリング男子の表彰式では、優勝したアメリカ代表チームが表彰式で「女子カーリング」と書かれた金メダルを手渡される、という手違いがあった。だがカーリングにははるかに大きな驚きが秘められている。科学者さえ解明できない謎だ。
カーリングをよく知らない人のためにルールを簡単に説明すると、カーリングは1チーム4人で対戦し、両チームの選手が交互に長方形の氷上にストーン(石)を滑らせる。約40メートル先の「ハウス」と呼ばれる同心円の中心のより近くへ、より多く石を入れることができたチームが勝利する。カーリングという名称は、ストーンが氷上を滑る時、ボウリングの球がレーンを転がる時のように回転(カール)するのに由来する。
一体なぜ、大きさ直径約30センチ、重さ約20キロのストーンが、選手がブラシで氷の表面をこすることで狙った方向に曲がるのか。いまだに謎のままだ。
「異質なものほど人は興奮する。ストーンはその典型だ」と、カナダのバンクーバーアイランド大学の天文物理学者でスポーツ物理学を研究したレイ・ペナー教授は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに語った。
ストーンが他の物体と決定的に違うのは、回転と同じ方向に曲がることだ。例えば料理用のボウルを伏せて滑らすとどうなるか。動画で見る通り、反時計回りに回転させると右に曲がる。だがストーンは反時計回り(左回転)に回転をかけると左に、時計回りなら右に曲がる。なぜか。説明を試みた理論は多数存在する。
(この動画を見ると、ボウルはストーンが他とは逆回転なのがわかる)
中世からの謎
そのうちの1つ、「スティックスリップ摩擦論」は、氷上に広がる無数のペブル(氷の粒)に注目した。これを提唱した物理学者たちは、ストーンの底がペブルに接して生じた摩擦力に左右差が生じる結果、摩擦力の大きい方を軸にして回転方向と同じ方向に曲がる、と主張する。数学的な理論だが、全員が賛成というわけではない。この理論の提唱者は、回転速度に関わらずストーンは同じように曲がると言っているからだ。
もし「スティックスリップ摩擦論」が正しいなら、ストーンの回転が速いほど大きく曲がるはずだ、と航空宇宙学の元エンジニアであるマーク・デニーはウォール・ストリート・ジャーナルに語った。
「なぜストーンが曲がるのかに関して、自分も似たような理論を思いついたことがあるが、同様の理由で行き詰まった」と、デニーは言った。
もう1つの理論は、ストーンが氷と接触するのは底にある幅数ミリの輪の部分だけ、という点に注目。氷上を滑る際、輪の前方の部分は氷の表面に小さなかき痕を作りながら進む。その痕にストーン後方が誘導されていく結果、ストーンが回転方向と同じ方向に曲がる、と説明する。
カーリングは15~16世紀頃発祥といわれる古いスポーツだが、科学者たちはまだ、ストーンがなぜ曲がるのかという単純な理屈ひとつわかっていない。
カーリングの選手は、理論的に説明できないものをどうコントロールしているのだろう?
(翻訳:河原里香)
【訂正】本文中に「ボウリングの球」とあったのは、「(料理用の)ボウル」の誤りでした。お詫びして、訂正します。
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