王岐山、次期国家副主席の可能性は?
彼本来の得意分野である金融や経済貿易問題に関して、対米交渉などを主として担うことになると思われるが、そう考える根拠を、もう一度整理しておきたい。
1.まずバノン氏との密談を仲介したのがゴールドマン・サックスの元CEOであったということだ。バノン氏自身もかつてゴールドマン・サックスで働いていたことがある。したがって王岐山がジョン・ソーントン教授に依頼するとき、王岐山自身がかつて長いこと銀行畑を歩んできたことも説明しただろう。つまり、王岐山がバノンに会いたがったのは、元銀行マン同士の交流の線上で、現在の米中貿易に関するトランプ政権の本音を知りたかったからだろうということが推測できる。
2.2月14日、イギリスの「フィナンシャル・タイムズ」が、習近平や王岐山等が最近、駐中国のアメリカ大使ブランスタッド氏と密会していることを暴いている。このとき経済分野に関する習近平のブレインである劉鶴(中共中央政治局委員)もブランスタッドに会っているという。いずれも密談の内容は米中の経済貿易問題であったとのこと。アメリカの外交官を通して、ここのところトランプ政権が鮮明に打ち出し始めた対中貿易戦争の勢いをくい止めようというのが狙いだとフィナンシャル・タイムズは報道している。
3.習近平は対米交渉において、楊潔チ国務委員(中共中央政治局委員)や王毅外相(中共中央委員会委員)といった型通りの官僚ではなく、王岐山のような型破りの大物を持ってこないと米中間に横たわる巨大で複雑な問題を解決することはできないと考えているのではないかと推測される。
以上のような根拠から、習近平は王岐山に対して、一般のセレモニー的な(李源朝が担った程度の)「主席の代行的役割」だけでなく、反腐敗運動で辣腕を振るった王岐山の豪胆さを、今度は彼本来の金融や経済貿易の分野において本領を発揮してもらおうと期待しているのではないかと思うのである。
なお、中国大陸のネットでは、王岐山とバノン氏の密会はもとより、ブランスタッド大使との密会に関する情報も削除されている。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。