衛星画像で見つける金正恩「最大の弱点」とは
さらには、北朝鮮が過去に行った国民に対する大量殺戮の証拠も見つけなければならない。例えば、1993年に発覚した「フルンゼ軍事大学留学組」によるクーデター未遂や、1995年に起きた6軍団のクーデター未遂などの事件が起きると、そこに連座したとみなされた人々はことごとく銃殺され、その一族郎党が管理所に送られた。そうして殺された人々の亡骸は北朝鮮の野山に埋められており、その場所を特定することが必要なのだ。
北朝鮮は無謀な核・ミサイル開発によって国際社会の追及を受けているが、これは彼らの抱える最大の問題ではない。核兵器や弾道ミサイルは、政治決断によりいつでも放棄できるし、そうすれば国際社会との関係も改善する。
しかし、過去に行った人権犯罪は消すことができない。これこそが、金正恩体制が抱える最大の弱点なのだ。NGAの民間に対する資料提供が本格的に行われれば、北朝鮮は経済制裁にも増して、大きな脅威を感じるかもしれない。
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。