最新記事

北朝鮮

衛星画像で見つける金正恩「最大の弱点」とは

2018年2月23日(金)18時10分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

金正恩の時代になって収容所の実態把握は困難になってしまった KCNA-REUTERS

<衛星画像の解析によって政治犯収容所の実態が解明できれば、金正恩体制にとって最大の弱点となる>

米国の情報機関である国家地理情報局(NGA)が、衛星写真や航空写真を非政府組織(NGO)や研究機関に提供する予定だと、米国の外交専門誌フォーリン・ポリシーが21日に伝えた。

NGAの軍事アナリストであるクリス・ラスムセンは同誌とのインタビューで、NGOとの最初の協力は、北朝鮮に焦点を当てたものになると述べている。

これまで北朝鮮における人権侵害を追及するNGOは、商業衛星写真や脱北者の証言などに基づき、政治犯収容所に代表される北朝鮮の人権蹂躙の証拠を見つけてきた。

<参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」...残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

しかし、商業衛星は軍事衛星に比べれば解像度で劣るし、購入費用も非常に高くついていた。NGAが今後、どこまで鮮明な画像を提供するかはわからないが、コスト面だけでもNGOにとっては大きな助けとなろう。

とくに期待されるのは、政治犯収容所の実態解明である。

北朝鮮で「管理所」と呼ばれる政治犯収容所には以前、有期刑の囚人を収容する「革命化区域」と、無期刑の囚人が入れられる「完全統制区域」が存在していた。そのため、革命化区域から釈放され、脱北した人々の証言により収容所の実態が外部に知られることになったのだ。

しかし金正恩党委員長の時代になり、北朝鮮は革命化区域をなくし、収容所すべてを完全統制区域にしてしまった。これにより、収容所の実態把握が困難になってしまったのだ。

また政治犯収容所だけでなく、強制送還された脱北者らを収容する施設も、人権侵害の現場となっている。そこで行われていることは、被害者たちの証言に繰り返し触れながらも、日本の常識ではなかなか信じられないほど凄惨なものだ。

<参考記事:北朝鮮、脱北者拘禁施設の過酷な実態...「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中