アメリカの橋は本当に危険? インフラ「劣化説」を検証した
1月31日、初の一般予算教書演説で少なくとも1兆5000億ドル(約164兆円)のインフラ投資を求めたトランプ大統領は、再三にわたり、国民やビジネスにとって橋梁が危険だと指摘している。写真は2007年8月、崩壊事故の起きたミネアポリス市内のミシシッピ川を渡る州間高速35号線の橋梁(2018年 ロイター/Scott Cohen)
トランプ大統領は、30日に行った初の一般教書演説で、米国のインフラ劣化を問題視し、橋梁や道路に対する投資の増額を求めた。
今後10年間で官民合わせて少なくとも1兆5000億ドル(約164兆円)のインフラ投資を求めたトランプ大統領は、「わが国の偉大な建築遺産を取り戻すことができる。輝かしい新たな道路、橋梁、幹線道路、鉄道、水路を国土の至るところに建設する」と演説した。
トランプ大統領が掲げた計画の細部は曖昧であり、どのようなプロジェクトにどれだけの金額が投じられるかは明らかではない。だが他の政治家やロビイスト同様、トランプ大統領は再三にわたり、国民やビジネスにとって橋梁が危険だと指摘している。
全国岩石砂礫(されき)協会から全米飲料協会に至るまで、さまざまな業界団体がインフラ投資拡大を要求している。
だが、ロイターが全国の橋梁データを分析したところ、橋梁など道路インフラの安全性を巡る懸念は誇張されており、より深刻な別の問題に対する注意をそらしてしまいかねない。
●幹線道路にかかる橋梁の約9%が、昨年時点で構造的な問題を抱えていると考えられる。だが1日最低1万台の車両が通るような交通量の多い橋梁のうち、問題があるのはわずか4%。とはいっても、倒壊の危険が迫っているわけではなく、単に改修が必要だという程度だ。
●20万台以上の車両が通る、国内で最も交通量が多い約1200カ所の橋梁については、この数値は2%以下、つまり20カ所以下にまで減少する。
●構造的に問題があるとされる橋梁の比率は、1992年に22%、2009年に12%と、ここ数十年で低下している。
実際、2014年の学術的研究では、毎年約120カ所の橋梁が倒壊ないし部分的に倒壊しているという結果が出ているが、ほとんどが構造的劣化ではなく、洪水、火災、そして衝突によるものだ。
また、倒壊した橋梁の大半は通過車両数が1日755台未満であり、死傷者が出たものは全体の約4%にすぎない。
「私たち一般市民は安心すべきだ」と、2014年に橋梁欠陥に関する研究を執筆したニューメキシコ鉱業技術研究所の構造エンジニア、ウェズレー・クック氏は語る。