最新記事

自動車

トヨタ、EV時代へ新型磁石開発 高価なレアアース使用削減に成功

2018年2月21日(水)09時17分

2月20日、トヨタ自動車は電気自動車(EV)など電動車の普及をにらみ、高価なレアアース(希土類)「ネオジム」の使用量を大幅に削減したモーター用磁石を開発したと発表した。2017年11月撮影(2018年 ロイター/Mike Blake)

トヨタ自動車<7203.T>は20日、電気自動車(EV)など電動車の普及をにらみ、高価なレアアース(希土類)「ネオジム」の使用量を大幅に削減したモーター用磁石を開発したと発表した。世界で初めてネオジムの使用量を減らしても従来の磁力や耐熱性を維持できる技術を確立したという。

同社は今後、車の電動パワーステアリングなどのモーター向けは2020年代前半、さらに高性能が求められるEVなどの駆動用モーター向けは10年以内の実用化を目指す。ロボット用など車用以外での応用も検討する。開発した磁石は内製せず、磁石メーカーに製造を委託する考えだ。

自動車用モーターに使うネオジム磁石は、高温でも磁力を保つ性能が求められる。このため、レアアースの中でもジスプロシウムなどの高価な希少金属の使用が必要で、16年にはホンダ<7267.T>と大同特殊鋼<5471.T>がジスプロシウムなどを一切使わないネオジム磁石をハイブリッド車(HV)用駆動モーター向けとして初めて実用化したと発表している。

今回トヨタが開発した磁石でも、ジスプロシウムなどを使わない。また、ネオジムを減らす代わりにレアアースの中でも安価で資源量が豊富な「ランタン」と「セリウム」を使う。これらの価格は、ネオジムの約20分の1程度。

ネオジムの使用量は電動車の駆動用モーター向けなら従来比で約20%、用途次第では最大約50%削減できるという。単に置き換えるだけでは磁石の耐熱性や磁力は低下するが、ランタンとセリウムを特定比率で配合するなどして性能の悪化を抑えた。

トヨタは世界販売に占めるEVやHVなどの電動車比率を現在の15%程度から30年に50%以上へ引き上げる方針で、電動車を現在の約150万台から550万台以上に増やす計画。ネオジムは電動車の普及に伴い供給不足が懸念されることから、新技術で高出力モーター用磁石の需要拡大に備える。

(白木真紀)

[東京 20日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB総裁ら、緩やかな利下げに前向き 「トランプ関

ビジネス

中国、保険会社に株式投資拡大を指示へ 株価支援策

ビジネス

不確実性高いがユーロ圏インフレは目標収束へ=スペイ

ビジネス

スイス中銀、必要ならマイナス金利や為替介入の用意=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 7
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 8
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中